“トマトの香りがする”シチリアのオリーブオイルを知っていますか?

sicilian olive oil and mozzarella

モッツァレラのフレッシュな美味しさを引き立ててくれるのが、エクストラバージン(EXV)のオリーブオイル。いろいろな国で生産され、日本でもたくさんの種類を見かけるようになってきましたが、実は、品質も価格も千差万別。

でも「青いトマトのような香りがあって、風味はマイルド。さらに、伝統的な手仕事でじっくり作られた少量生産のオリーブオイル・・・」と聞いたら、どうでしょう?ぷるん、つるんとしたモッツァレラにかけて、食べてみたいと思いませんか?

そこで、チーズと“化学反応”を起こしてくれる「&」なものを題材としたイベントシリーズの第4弾は、そんなシチリア産のオリーブオイルをテーマに開催。

この「トマトの香りがするオリーブオイル」を作る環境で生まれ育ち、シチリアの食の魅力を伝えているルーチョ・スケンバリさんを講師に迎え、お話を伺いました。

 

Lucio Schembari

Lucio Schembari(ルーチョ・スケンバリ)さん
イタリア、シチリア島ラグーサ出身。2010年、岡山県県北、蒜山(ひるぜん)高原に移住。コテージ貸別荘「蒜山 ロカンダ ピーターパン」を営みながら、オリーブオイルやはちみつ、モディカ・チョコレートといった、シチリアの食材の輸入販売も行っている。

 

Lucio Schembari

「家族全員でオリーブの収穫をして、その実を搾って、丁寧にオイルにする。生まれたときから当たり前のことだったけれど、この昔ながらのオリーブオイル作りがいかに素晴らしい文化か・・・気づいたのは、14歳の頃でした。」

6歳の頃から家業を手伝い始めていたものの、オリーブの手摘み収穫のサポートで、ほかの農家にも行くようになったのが、14歳。その後も、地元のレストランなどで働くなかで、オリーブオイルの使い方や知識をさらに学び、ルーチョさんはシチリアのオリーブオイルの品質の高さ、素晴らしさを体感していったそうです。

実際に、国際的な品質評価のコンクールで上位に選ばれるオイルの2割ほどは、シチリア産のものなのだそう。

 

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(写真提供:Lucio Schembari)

オリーブの木は60年以上の樹齢で、実のクオリティも収穫量も安定するとか。
「でも古木だから実のクオリティが良いと言うことでもないんですよ」とルーチョさん。オリーブの世界、とても奥が深そうです。

 

シチリアは、イタリアであって、イタリアではない。

シチリアと言えば、地中海に浮かぶ大きな島。長い歴史のなかで、半島のイタリア本土とはまた異なる影響を受けながら、独自の文化も花開いてきた土地です。

 

Modica
(写真提供:Lucio Schembari)

500年前、貴族が住んでいたという「モディカ」は、世界遺産にも認定されている街で、後期バロック様式建築が有名。さらに、この街の名前もついたモディカ・チョコレートは、海洋文化がもたらした代表的なものの一つとして、現在に伝えられています。

大航海時代、中南米からトマトやジャガイモと同様に、カカオも古代アステカでのチョコレートの製法(レシピ)とともに伝来。カカオと砂糖、自然香料を低温で溶かし混ぜ、冷やし固めるという、とてもシンプルな製法で、低温で結晶化した砂糖のシャリシャリとした食感が何とも美味しいチョコレートです。

 

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ミルク感たっぷりのリコッタとモディカのチョコレートを合わせると、上品なドルチェに。イベントでは、同じシチリア産の野生のタイムの無濾過はちみつも合わせて、試食が行われました。

 

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(写真提供:Lucio Schembari)

また、ひときわ温暖な気候も、半島の本土以上。トマトやワインの名産地としても知られるシチリアですが、北アフリカから吹く「シロッコ」という南風を受けるイブレイ高原は、高品質なオリーブオイルを生む在来品種「トンダイブレア」の産地で、「D.O.P.(原産地名称保護)モンティ・イブレイ」の認定に欠かせない、特別なテロワールなのだそうです。

 

在来品種「トンダイブレア」の魅力

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(写真提供:Lucio Schembari)

これが、トンダイブレア種のオリーブの実。品種の中ではポリフェノールの含有量は低めですが、抗酸化作用が高い(酸度の数値が低い)まだ緑色で白い斑点のある状態で収穫することで、高品質なオイルになるのだそうです。EXVオリーブオイルの酸度は0.8%までと規定されていますが、この日、ルーチョさんが用意してくれたトンダイブレア種のオイルは、なんと0.2%以下。酸化しにくく、ヘルシーで高品質と言われる大切なポイントです。

 

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トンダイブレア種のオリーブオイルの味わいは、フルーティーで辛味・苦味のバランスが良く、後味がマイルド。香りは、青みがかったトマトのような香りがしっかり。

この“トマトのような香り”が特徴の一つなのですが、トンダイブレア種のオリーブは、何とトマトと同じDNAがあるのだそう!シチリアの在来品種なのに、南米原産のトマトと同じDNA!?まさに、自然の不思議です。

ですから、フレッシュなモッツァレラとの相性は最高。「シンプルなカプレーゼにぴったり!」とルーチョさんが太鼓判を押すのも頷けます。

 

「トンダイブレア」のEXVオリーブオイルは、どう作る?

フレッシュチーズにぴったりのトンダイブレア種のオリーブオイル。イベントではその製造工程も紹介されました。

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(以下、製造工程の写真提供:Lucio Schembari)

収穫は手作業。キズがあるものや熟しすぎている実は除き、きれいな実のみを選果します。

 

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ルーチョさんの家族。高品質なトンダイブレア種のオリーブオイルを伝統的な製法で作っています。

 

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オリーブの実の洗浄。

 

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洗浄された実は、破砕し、混ぜながら、ペースト状にしていきます。この時、実は少し酸素が必要なのだそう。酸化の効果で風味を引き出すのですが、酸素が足りないとキュウリの香り(あってはいけない香り)が出てしまうとのこと。

また、オリーブの実に水分量が少ないときは、水を足すことも。ハンマーのように打ち付けるような破砕をすることで、フレッシュなオリーブオイル特有の辛みと苦みが引き出されます。

 

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遠心分離機にかけることで、固形物、水分、油分に分かれます。

 

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搾油。100kgの実から採れるオイルは13kg程度なのだとか。

 

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酸化による劣化を防ぐため、窒素補給されるステンレスタンク内へ。低温(14度程度)で保たれ、その後ボトリングされます。

 

テイスティングのポイント

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参加者によるテイスティングは、4種類で実施。作り手の異なるトンダイブレア種のオイルが2種類、同じシチリアのモレスカ種のオイル1種、さらに、あえて欠陥のあるオイルを比較しながら、行われました。

 

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まずは、色を観察。フレッシュなオリーブオイルはクリーンな緑色ですが、熟成によっても変化していきます。

「テイスティングする前に、もしオイルが冷えている時は温めてください。口に含んだら舌全体に馴染ませて、すっと空気を吸ってみて・・・」とルーチョさん。香りの広げ方は、ワインのテイスティングと似ています。

ソムリエのような正しいテイスティング方法は少し難しかったようですが、みなさん「本当にトマトみたいな香りがする」「ピリッとする感じとか余韻の長さも違って面白い」「(欠陥があるオイルを口に含み)うぁ〜ダメだこれ・・・全然違う」とそれぞれに体感。

嫌な油っぽさがないか、また辛みと苦みの度合い、バランスはどうかをチェック。あとは、美味しい、心地よいと感じるかどうか、自分の好みに合うかで選んでいいとのアドバイスもありました。

「瓶内でもオイルの熟成は進みます。開封後は特にですが、使う前に、テイスティングを必ず行う習慣をつけ、もし酸化してしまっていたら、加熱調理用に使用するようにしてほしいですね。」

 

まずは知ること、試してみることから

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値段やブランド、パッケージデザインではなく、実際に試飲できる店や機会を活用し、自分の舌で、自分好みのオイルを見つけ、それを食していく。それが、本物のオリーブオイルを楽しむためには必要であるということを学びました。

イタリア産として販売されているオリーブオイルでも、その原料はスペインやチュニジアの安価なオリーブを仕入れて作られているものが多いとのこと。海外原料を仕入れて、日本で醸造・瓶詰めすれば「国産ワイン」と称することができるものの、消費者に混乱を与えかねないというワインの話にも少し似ています。

チーズやワインと同じく、テロワールや品種、作り手の想いや手法が詰まったオリーブオイルも、十把一絡げにはできない、奥深い世界。

まずは知ること、試してみることから。
「&」な組み合わせを通じて、フレッシュチーズをもっと豊かに楽しむヒントが得られたイベントとなりました。

 

text by 佐野嘉彦(CHEESE Media 編集長)
photographs by 石原哲人

 

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“トマトの香りがする”シチリアのオリーブオイルを知っていますか? 〜ルーチョ・スケンバリさん〜

 

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