“生まれたまんま”の乳製品。その美味しさの秘密とは?《牧歌 後編》

bocca

《牧歌 前編》「日本一小さな牧場は、牛乳大好き少年の夢から生まれた」 はこちら

「牧歌」の牛乳のふたを開けると、とろりと生クリームが浮いています。ヨーグルトのふたを開けると、はたまたクリームの層が現れます。牛乳はすぅっとしたのど越し、ヨーグルトはしっかり酸っぱい、でも甘みとうま味とコクがある!

市販されているものと全く違う、牛乳とヨーグルト。一体どこが違うのでしょう?さらに、食べても食べてももう一口!と手を伸ばしてしまうハードチーズも魅惑的です。

milk and yogurt of bocca

「牧歌」河内さんの乳製品の秘密を探るべく、牛と山羊と羊を放つ牧場と、工房をお訪ねすると、そこには、昔は当たり前だったのに今は当たり前ではなくなった「シンプルミルクライフ」がありました。

 

牧場に歌を響かせる、牛と山羊と羊と果樹と

goats of bocca

40アールの小さな牧場の住民は、お母さん牛でジャージー牛の「じゃい子さん」と娘の「まる子さん」、ザーネン種の山羊の「ランちゃん」に娘の「ゆきちゃん」。そして、フライスランド種の羊の「こゆきちゃん、こなゆきちゃん、ささゆきちゃん(三姉妹)」に、双子の仔羊「みかんちゃんとレモンちゃん」。もちろん皆さん今をときめく“女子”(雌)!かわいい名前を持っています。

牧場の周りには、糞を堆肥にして育つ果樹がたくさん植えられていて、四季折々に訪れる客人をもてなし、イベント時にも大活躍。もちろん、じゃい子さんたちも果物が大好きです。湘南ゴールド、夏ミカン、枇杷、キウイ、イチゴetc・・・。

shonan gold tree of bocca

「メ~!」「ンモ~!」「ベェェエ~!!」
「湘南ゴールドちょうだいよ!」「私も、私も~!」って言っているのかな?

田んぼに渡る風に乗って届く彼女たちの声は、そう、まきばの歌。そんなゆったりとした時間が流れる牧場で、河内さんは1日1回、乳搾りをしています。

現在は、夜乳搾りをしてから牛乳やヨーグルトを仕込む毎日。3人のお子さんの父でもある河内さん、大忙しです。

牛は大きいので発電機を動かし搾乳機を使いますが、山羊と羊は手搾り。なんと原始的。10キロのミルク缶を運ぶと、さぁここから工房での仕事が始まります。

 

懐かしい味わいを再現する、75度10分間殺菌、ノンホモ牛乳

milker of bocca

牛乳には様々な殺菌温度(方法)があるのをご存知でしょうか。63度30分、とか120度3秒といったようにパックに表示されている殺菌方法です。

河内さんの牛乳は75度10分間殺菌、ホモジナイズと呼ばれるミルクの脂肪分を細かく砕いて均質化することをしない、ノンホモジナイズ牛乳。ヨーグルトも、同じくノンホモ牛乳に、老舗うなぎ屋のタレのように継いで継いできた乳酸菌(ヨーグルト)を入れて、一定温度で4~5時間発酵させるだけ。どちらも“生まれたまんま、そのまんま”の味です。

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近所の牧場に鍋を持って行ってミルクを分けてもらい、台所で温めて飲んだ時代が日本にもあり、「きっとその味に近いであろう」「自分が美味しいな」と思うこの方法で、牛乳とヨーグルトを作り続けています。

 

牧歌のハードチーズ「プリンス」。味の決め手は乳酸菌

hard type cheese of bocca

乳酸菌が腸内環境を整えるとか、健康維持に欠かせないなどなど、注目を集める昨今ですが、発酵食品であるチーズを作るうえでも、乳酸菌の存在は大きなポイントです。

少々マニアックになりますが、日本のチーズ工房では一般的に、チーズ製造用に調整、配合された外国製の乳酸菌を購入して、チーズを作ることがほとんどです。

ですが、河内さんは長年自分の作る“生まれっぱなし”のヨーグルトを使ってチーズ作りをしています。この“牧歌印の乳酸菌群”が、河内さんのチーズを醸し、嫌味も苦みもない、穏やかでふんわりとバターのように香るハードチーズ「プリンス」を作り出してくれるのです。

 

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じゃい子さんたちや沢山の果樹と共に育ってきた、河内さんのお子さんたちも、お父さんの作る乳製品が大好き。

「牧場やってチーズ作ってるなんて素敵だと思います。お父さんのチーズとっても美味しいですね」と高校生の娘さんに伝えたら、とびっきりの笑顔で「はい、私も父の作るチーズ大好きです!」と。

もうこの時点で、牧場「牧歌」は大成功ですね。

 

「台所でもチーズは作れる、小さなスペースでも酪農は出来るよ」と伝えたい

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河内さんが酪農とともに歩んできた20数年は、筋の通った一本道でした。たどり着いた“牧歌スタイル”もその道の上にあります。

小さな牧場でお金や労力をかけずに、すべてのミルクを加工し、世に送り出す。乳製品の微生物検査も固形分を測るのも自分でやり、チーズの型も手作り。市販のプラスチックタッパーに穴を開けた型も、漬物石の重しも、身近なホームセンターで手に入るものばかり。

「やってみようと思ったら、出来そうだな、楽しそうだなと思ってもらいたい。小さな酪農も一つの選択肢になるように」と河内さん。

かじりつくようにチーズの本を隅々まで読みながら、独学で羊のハードチーズや、混乳ハードチーズも、10年以上前から作ってきました。今後は、牧場での体験イベントを増やし(羊の毛刈りをしてフェルトを作り、そのフェルトでベレー帽を作るなんてアイディアも!)、より多くの方に牧歌を知ってもらう機会を作っていきたいそうです。

 

goat and sheeo of bocca

これまでと、今、そしてこれから。

河内さんは牛乳大好き少年の眼差しのまま、小さな酪農と工房で乳製品を作り、「牧歌」ファンに届けていきます。日々ちょっとずつ進化しながら、果樹や家畜たちと共に、まきばを謳いながら。

 
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牧歌 Bocca

神奈川県厚木市王子1-12-9
Tel. 046-295-9260
bocca2005@ai.ayu.ne.jp

※訪問や乳製品のご購入につきましては、事前にお問い合わせください。
 
牧歌の乳製品が買える場所
上記直売所、もしくはJA厚木農産物直売所「夢未市 本店」「夢未市 相川店」「厚木市農協グリーンセンター店」

 

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大和田百合香(おおわだ ゆりか)
2001年より1年数か月にわたり、フランスやイタリアのチーズ産地を訪ね歩き、帰国後「BonBon! FROMAGE!」の名前でチーズを楽しむ会を主催。チーズ王国本店に勤務しつつ、ライフワークである国産ナチュラルチーズの工房を訪ねて北へ南へ。二人の男児育児にも奮闘中。東京農業大学栄養学科卒。CPA認定チーズプロフェッショナル、JSA認定ワインアドバイザー、フランスチーズ鑑評騎士の会シュヴァリエ。

 

牧場から始まるチーズの世界

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美味しい日本のチーズには、日本の酪農とともに生きる素敵なストーリーが。日本各地の牧場、そしてチーズ工房を訪ね、その魅力に迫る連載です。

http://cheese-media.net/?tag=farm

 

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