チーズ初心者にも通(ツウ)にも、好まれる。「ブリチーズ」が人気のワケとは?

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優しくマイルドで、上品なミルクの風味を感じる「ブリ(Brie)」(ブリーとも呼ばれます)。その味わいからチーズ初心者にもおすすめのチーズで、最近では日本のスーパーで販売されていることも多くなってきました。

でも、通(ツウ)が好むような個性的なブリもあり、逸話が多いチーズでもあります。カマンベールと並び、白カビタイプの代表とも言える、この「ブリ」の世界を今回はご案内します。

 

ブリってどんなチーズ?

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ブリ(ブリー)と言えば、もともとはフランスのパリを中心としたイル・ド・フランス地方、その中でもパリの東側からシャンパーニュ地方にかけてのエリア(ブリ地方)で作られている、円盤状の白カビタイプチーズ全般を指していました。

最も有名な「ブリ・ド・モー」の名前なら、聞いたことのある方も多いかもしれません。ブリは、パリが近いため昔から消費量が多く、その美味しさの評判が広まり、特に貴族にも好まれていました。

ブリは、チーズを食べ慣れない方にも食べやすく美味しいので、世界的に大人気。レストランのチーズの盛り合わせなどでも必ずと言って良いほど盛られているので、それと意識せずに食べている方もいらっしゃるはずです。

 

ブリには「三兄弟」がいる!?

ブリは、「ブリ・ド・モー(モー村のブリ)」や「ブリ・ド・ムラン(ムラン村のブリ)」など、「ブリ+地名」で昔から呼ばれていることが多く、それがそのままチーズ名になることもしばしば。

特に、その「ブリ・ド・モー」、「ブリ・ド・ムラン」、そして「クロミエ」は、いずれも地名の付いたブリで、互いの産地も近く、“ブリ三兄弟”とも呼ばれて親しまれています。

ブリを代表するチーズとも言えるので、この3つについてはもう少し詳しくご紹介しましょう。

 

ブリ・ド・モー(Brie de Meaux)

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ブリの中ではダントツの知名度を誇る、ブリ・ド・モー。

パリの東、約40kmの所に位置するモー村の発祥で、直径は36~37㎝、重さは2.5~3㎏、白カビに覆われた姿には堂々とした風格と気品があります。白カビチーズとしては最大級のサイズで、木箱に入ったホールサイズのものは特に圧巻です。ブリ三兄弟の中で、最も大きな“長男”です。

味わいは優しく上品、ミルク感があり、繊細で複雑です。口あたりはクリーミーでなめらか。白カビチーズらしいシャンピニオン香(キノコのような香り)も程良く、誰にでも好まれやすいチーズです。

無殺菌乳を使用しているため、若いうちはむっちりとしていた組織は、熟成とともに表皮の下からだんだんトロリと柔らかく、風味はより複雑に豊かになっていきます。そして熟成が進んでもその洗練さを失うことはありません。貴族に好まれたのも納得できる、エレガントなチーズです。

ブリ・ド・モーを一躍有名にしたのが、「会議は踊る、されど進まず」の言葉でも有名な、1814~1815年のウィーン会議。この場で開かれたチーズのコンクールで優勝したのが、このブリ・ド・モーです。それ以来、「チーズの王」として、また、貴族に好まれた「王のチーズ」としてもさらにその名を馳せることとなりました。

 

ブリ・ド・ムラン(Brie de Melun)

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三兄弟の“次男”が、このブリ・ド・ムラン。

直径30㎝弱、重さ1.5㎏強と、モーより小型ですが、その味わいは、より力強くて野性的。白カビに覆われた表皮はやや褐色味を帯びていて、見た目でも野性味を感じます。

原産地は、パリの南東約40kmに位置する町、ムラン。優しい味の白カビでは物足りないという、チーズを食べ慣れた方に特におすすめしたいブリです。

 

クロミエ(Coulommiers)

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パリの東、約60kmの所に位置するクロミエの町が原産の、円盤形白カビチーズ。

真っ白な白カビで覆われたクロミエは、優しくミルキーな味わいで食べやすいものが多く、組織はむっちりとしています。直径20cm弱と、三兄弟の中では一番小さな“末っ子”です。

 

世界中で愛される、ブリチーズ。美味しい食べ方は?

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もともとは、パリの東のブリ地方で作られていたブリチーズですが、その人気ゆえ、現在ではブリ地方以外でも(フランス以外でも!)似たようなチーズがたくさん作られるようになりました。

そういったブリタイプのチーズは、本場のものよりお値段がお手頃。また、味わいも軽やかでより食べやすく、状態も変化しにくいので、日本のスーパーでも並んでいるのを見かけるようになりました。

また、ブリのバリエーションも様々で、黒胡椒をまぶしたもの、グラン・マルニエというオレンジのリキュールで風味付けしたマスカルポーネを間に挟んだもの、トリュフのスライスを挟んだ贅沢なものなどがあります。

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ブリを食べる時は、なんと言っても、カットしてそのままワインと共につまむのがいちばん。その時は室温に戻すのを忘れないようにしましょう。チーズの風味をより感じられるようになります。さらにジャムやドライフルーツなどと一緒にいただくのも美味です。

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また、熟成の若いものなら朝食にも合いますし、バゲットやクロワッサンに挟んでサンドイッチにするのもフランスでは一般的です。

さらに、ブリを丸ごと1個パン生地に包んで焼き上げる、なんてゴージャスな食べ方も!海外を中心に、少し流行りました。

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ブリとワインを合わせるなら、若いうちは白ワインを。熟成の進んだブリなら、熟成具合に応じて軽い赤~重い赤へと合わせるのが良いでしょう。

赤ワインの場合は、ブリの繊細な風味を消してしまわないよう、渋み(タンニン)の控えめなものがおすすめ。葡萄の品種としてはカベルネ・ソーヴィニヨンよりは、ピノ・ノワールなどの方が良いでしょう。また、ブリと産地が近いシャンパーニュも間違いありません。

 

東京・代官山で開催された「アペリティフin 東京2017」のイベントでは、ブリを使った一口サイズの料理もいろいろ登場しました。ワインやシャンパーニュにぴったりのこうしたアミューズは、おもてなしにも最適です。(以下協筆:CHEESE Media編集部)

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ブリチーズとツナのトマトファルシ。一口で味わえるサラダのアクセントに、ブリチーズはいい仕事をしてくれます。

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仔牛肉のローストに、スライスしたブリチーズを添えて。下には、エストラゴン(ハーブ)とマスタードのソースが忍ばせてありました。

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ブリを使ったカヌレ。ブリチーズの程よい塩気とうま味で、甘すぎない味わいに。ワインやシャンパーニュが思わずすすんでしまう、そんな焼菓子でした。

 

優しく上品な味で食べやすいブリ。誰にでも好まれやすくて美味しいので、チーズ選びに迷った時は、まずはブリをセレクトしてみてください。

チーズ初心者はもちろん、チーズ通をも満足させる、間違いのない万能チーズです。

 

ブリ(Brie)のきほん

  • タイプ:白カビタイプ
  • 主な産地:フランス、イル・ド・フランス圏 ブリ地方
  • 原料:牛乳
  • 熟成期間:4週間前後のものが多い
  • 形状・重さ:直径15~35㎝、厚さ3~4㎝、重さ500g~3㎏位のものが多い

 

yuki ogasawara
小笠原由貴(おがさわら ゆき)
恵比寿でパンと料理の教室「la nature(ラ・ナチュール)」を主宰。チーズのある食卓の幸福感、チーズの美味しさ、バリエーション、唯一無二のチーズが生まれる面白さに惹かれ、教室でも折に触れてその魅力を紹介している。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定ワインエキスパート、シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ。
http://ameblo.jp/naturefoodstyle/

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