「チーズを食べると骨が強くなる」ということは、たぶん皆さんご存じですよね。
チーズはすべてカロリーが高くて太りやすいと誤解されていることも多いのですが、クリームを添加していないほとんどのチーズのカロリーはさほどでもなく、むしろカルシウムはもちろん、健やかなカラダづくりに欠かせない成分がたくさん詰まっています。
今回は、そのなかでもランナーやアスリートには特に知ってもらいたい、“チーズの魅力”をお伝えします。
チーズがカラダに良い理由は、カルシウムだけじゃない!
ミルクから作られるチーズにはカルシウムが豊富に含まれていて、しかも吸収しやすい性質を持っているので、小魚や野菜などより効率良くカルシウムを体内に取り込むことができます。
カルシウムは骨を丈夫にし、骨粗しょう症などの発症を防ぎます。また神経細胞や筋肉の収縮のための電気刺激を伝達するのには欠かせない物質です。しかし、チーズの栄養成分で優れているのはカルシウムばかりではありません。
今、アスリートが注目しているのは「たんぱく質」。チーズの種類にもよりますが、約半分を占める栄養素です。
言うまでもなく、たんぱく質はカラダをつくる基となる栄養素。皮膚、内臓、毛髪、筋肉、骨・・・と人の身体の約15%(水分が約70%なので固形成分としては最大)も占めています。
日々新しいカラダへと新陳代謝を繰り返す私たちは、常にたんぱく質を取り込んでいかないとならないのです。
アスリートのパフォーマンス向上にも
さて、アスリートの話です。
スポーツ選手はパフォーマンスを上げるために、筋肉量を増やし、筋肉の質もより強くしていかなければなりません。
筋肉は強い運動をして酷使すると筋繊維が痛んで壊れます。身体は壊れた筋繊維をたんぱく質を使って修復していきます。この時に「筋肉痛」を感じると言われています。壊れる前より強い筋肉を形成いていくことから、繰り返し運動をして筋肉を使えば使うほど、筋肉量は増えて、質も上がっていくのです。
筋肉量を増やすためには、たんぱく質でも、吸収されやすいたんぱく質であると効率良く筋肉の修復ができて、より強い筋肉を作ることができます。
「吸収されやすいたんぱく質」とは?
たんぱく質とは、20種類のアミノ酸が鎖状に繋がってできた組織です。私たちは肉とか牛乳とか鎖状のたんぱく質を食事で体内に取り込みます。そして消化酵素で鎖のひとつひとつを分解して、アミノ酸という小さな単位にした後に、腸壁から吸収します。
修復する筋肉の細胞にまで届くには、食べてからそれなりの時間がかかってしまいます。アスリートが筋肉を早く修復させ、疲れを貯めないようにするには、消化吸収されやすいたんぱく質を選択することがポイントになるわけです。
マラソンなどの長距離走をする人たちは、走る前、走った直後(30分以内)に、合成されたアミノ酸サプリメントを摂るのが常識となっています。走る前に摂取するのは、運動中の筋肉の疲労が起きにくくなる効果が期待でき、良いパフォーマンスが長続きするからです。走った直後に摂取するのは、壊れてしまった筋肉の回復を速やかに始めることで筋肉痛(疲労)を出さないことを目的としています。
少しマニアックな話になってしまいますが、アミノ酸の種類によって効果や効能も異なります。
筋肉回復に一役買い、筋肉を増やす効果があるのは「BCAA」と呼ばれるアミノ酸で、バリン、ロイシン、イソロイシンという3種類です。この3つのアミノ酸は体内で作ることができないので、食品から摂らなければなりません。(必須アミノ酸と言われています)
アミノ酸サプリメントやスポーツ飲料のパッケージ「BCAA」と大きく表示されていますよね。
チーズは「BCAA」の宝庫!
この「BCAA」をたくさん含む食品が、実はチーズなのです。
チーズの中でもリコッタには、このアミノ酸が特に多く含まれています。同じようにリコッタの材料になるホエイを使ったホエイドリンクにも多く含まれています。
もしマラソンのエイドにホエイドリンクがあれば、私は真っ先に手を出すでしょう。(今まで出た大会で提供されていたことはありませんが・・・)
ホエイ由来の乳製品ではないけれど、熟成期間が1年以上と長いパルミジャーノ・レジャーノや長期熟成のコンテやゴーダなどのハードチーズにも「BCAA」はたくさん含まれています。
熟成が長いチーズは、アミノ酸レベルまで分解されていて、お腹の中で消化する時間がかなり短縮されることが期待できます。アミノ酸サプリメントのように、口にしたら早く筋肉に効いてくるのです。
さらに、それらのチーズには必ず乳脂肪や塩分(ナトリウム)、カリウムなどのミネラル分も含まれています。長距離を走ってエネルギーを使い、汗を大量にかいた身体には必要な栄養素です。
サプリメントをいくつも併用して摂るより、天然素材100%の食品であるチーズひと切れで事足りてしまうほうが良いと思いませんか?
そして一番の魅力といえば、「美味しい」ということ。口に入れるものですから、美味しいうえで、栄養効果があるほうが絶対に良いですよね!
“ランチー”で、前にススメ!
市民ランナーの私は、マラソン大会のスタート前と直後に必ずチーズを食べています。持ち歩きやすく、さっと食べられるようにカットしたチーズを携えて・・・その甲斐があってか、筋肉痛知らず。
そして昨シーズンより新たに始めたトレイルランニング(標高差が1000m以上ある山の登り下りをする)をするときは、練習でも大会でも必ずチーズが必需品。筋肉をバンバン使って長い坂道を登りきって、ちょっと休憩という場面で、給水とともにチーズをかじります。
ランの後には必ずチーズ、“ランチー”がおすすめ。美味しく、強く、健やかに、一緒に“ランチー”してみませんか。
- 佐藤優子(さとう ゆうこ)
- チーズプロフェッショナル協会常務理事。1995年にチーズをテーマにしたWebサイトを開設し、チーズに関する情報発信、産地を巡ることなどを始める。2000年にチーズプロフェッショナル協会の設立当初からの理事となり、公私ともにチーズ普及のど真ん中で活動することに。
今ミッションに思っていることは、趣味のランニングとチーズの栄養面の相性の良さをアスリートに知ってもらうこと。
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