理論的で、感性も豊か。専門的な知識で日本酒と真正面から向き合い、全国のつくり手の“現場”にも通うほか、パティシエやシェフ、各界のクリエイターとも親交が厚く、異業種とのコラボレーションにも積極的。
-5℃の冷蔵庫で徹底した管理のもと、“意外で美味しい発見”を《日本酒×食》に忍ばせてくる「GEM by moto」の千葉麻里絵さんにインタビューさせていただきました。(取材:2016年12月)
子供の頃からチーズが好き。
―チーズにまつわる特別な思い出やエピソードはありますか。
子供の頃からチーズが好きでした。母は手づくりが好きで、ピザも三姉妹で生地から手づくり。実家(岩手)で作っていた、不揃いだけれど美味しい野菜をのせて焼いたりしていました。
大人になってからは、モッツァレラが好きで、カプレーゼは特に好き。ゴルゴンゾーラやハード系のチーズも好きで、日本酒の仕事についてからは、チーズという食材にさらに面白さを感じるようになりました。たとえば、苦手な味わいの日本酒があっても、チーズを上手に使うことで美味しくなるということがあるんですよ。
チーズはとてもいい“つなぎ役”
―GEM by motoならではの、チーズを使った料理をひとつご紹介ください。
日本酒とのペアリングで、チーズはとてもいい“つなぎ役”をしてくれます。
この料理は「カチョカヴァッロとあんぽ柿の湯葉包み揚げ」。カットしたカチョカヴァッロとあんぽ柿をそのまま湯葉で包み、揚げ出し豆腐のように仕立てています。
熟成系の燗酒と合いますので、冬にぴったり。あんぽ柿の豊かな甘味、カチョカヴァッロが持つ乳の風味とうま味、そして、出汁のしっかりした味わい。そこに、熟成酒の丸みのある酸やうま味がプラスされ、口の中で次々に美味しさが生まれる…そんな楽しさがあると思います。
―CHEESE STANDのチーズを時々メニューで使ってくださっているのはなぜですか。
きっかけは、ブッラータでした。昔、ある店で初めてブッラータを食べたときに「世の中にこんなに美味しいチーズがあるなんて」と衝撃を受けたのですが、イタリアからの輸入もので、とても高価。自分の店で使うのはとても無理でした。
でも調べていたら、日本で、しかも同じ渋谷区で、ブッラータを作っている人がいることを知り…というのが最初の出会いでした。味や価格はもちろん、つくり手の顔が見えるというのも大事なポイント。美味しさとともに、ストーリーがあり、価値がある。日本酒の酒蔵と同じです。
日本酒を料理のソース感覚で捉えて
―チーズを使った料理と日本酒の合わせ方のコツなどを教えてください。
しぼりたてのフレッシュな日本酒ではなく、個性的な風味のあるお酒、お燗にして少しオイリーなニュアンスを出したり、古酒や貴醸酒などの熟成感のあるものがおすすめです。フレッシュチーズにオリーブオイルをかけるのと同じで、うま味やボリュームを足してあげる、そんなイメージで考えるといいと思います。
風味の強いチーズでも基本は同じ。うちの定番メニューに「ブルーチーズハムカツ」という料理がありますが、おすすめとして微発泡のどぶろくをお出ししています。ソース感覚で捉えて、自分の好みや経験に合わせるといろいろと楽しめると思います。
千葉 麻里絵さん
『日本酒と人は宝物』をコンセプトに掲げる、恵比寿「GEM by moto」の店長。
岩手県盛岡市出身。大学で化学を学び、3年間の会社勤務を経て、新宿の「日本酒スタンド酛(もと)」にオープニングスタッフとして入社。その後、利酒師の資格を取得し、これまでにない化学的な理論で日本酒を突き詰め、2015年現店をオープン。蔵元との交流を礎に、日本酒の魅力を広く伝えていくコラボレーションも多数行っている。
GEM by moto
東京都渋谷区恵比寿1-30-9
tel.03-6455-6998
営業時間/[火~金] 17:00~24:00(L.O.23:30) [土日祝] 13:00~21:00(L.O.20:30)
定休日/月曜
http://fsknet.co.jp/impression/moto_ebisu.php
text by 佐野嘉彦
photographs by 石原哲人
シリーズ《CHEF’S VOICE》
チーズを料理に生かす、プロフェッショナルたち。
- FRESH CHEESE Delivery(オンラインショップ)
- モチモチ、びよーん!ミルクの甘みと旨みが凝縮したチーズ、カチョカヴァッロ。
- 東京・渋谷で作られるカチョカヴァッロをお届けいたします。
http://fcd.cheese-stand.com/