シンプル&ピュアな手仕事とストーリーを。ジェローム・ワーグさん|the Blind Donkey

「自然の料理」を謳い、「the Blind Donkey(盲目のロバ)」という、ユニークな名を持つ店が、2017年12月、東京・神田に出現しました。禅宗の僧、一休の逸話に由来するというこの店名。「人間はいくつになっても未熟者。だから、自然の恵みに対し常に謙虚でいよう」という意味合いがあるのだそうです。

地産地消やサスティナブル(持続可能)な農業と流通、そして食育を提唱し続けている料理家、アリス・ウォータース氏によるカリフォルニアのオーガニックレストラン「Chez Panisse(シェ・パニース)」の元総料理長、ジェローム・ワーグさんが今回の主役。

同じく「シェ・パニース」の志を分かち合う原川慎一郎さん(元「BEARD」[東京・目黒]シェフ)とともに、持続可能な未来の食を見据え、この日本で新たな道を歩みだしたジェロームさんにインタビューさせていただきました。

 

チーズも、シンプルでピュアなものを

―チーズにまつわる特別な思い出やエピソードはありますか。

自然豊かなフランスのプロヴァンスで私は育ちました。母は今もプロヴァンスに住んでいますが、ハーブや野菜とともに、子供の頃からチーズも日常の食卓にあるものだったので、とても馴染み深い食材です。

サンドレ(灰まぶし)したものや「Banon(バノン)」のような葉に包んで熟成させるチーズなども好きですが、フレッシュタイプのチーズが一番好きですね。南仏の特産であるハーブをまぶしたチーズもありますが、私はハーブの香りや味わいは調理で施したいので、チーズ自体はごくシンプルなものが好みです。

なかでも大好きなのは「Brousse(ブルッス)」と呼ばれるフレッシュチーズ。山羊や羊のミルクでつくられることが多いのですが、そのシンプルでピュアな味わいは最高です。

 

出来たてのチーズ、そこには代えがたい価値がある

―メニューでCHEESE STANDのリコッタを使っていただいているのも、その「シンプルでピュア」ということがポイントなのでしょうか。

そうですね。東京の言わば、ど真ん中にある工房で日々つくられているリコッタは、まさに新鮮でピュアなミルクの味が生きているチーズ。野菜やハーブとシンプルに合わせることで、美味しい料理ができます。

「the Blind Donkey」では、自然を大切にし、持続可能な仕事をしている日本各地の生産者の食材をもとに、さまざまなメニューを展開しています。食は文化です。その土地土地で育まれる食材には、個性を持った素晴らしいものがある。CHEESE STANDの「出来たてリコッタ」も、東京産のミルクでつくられるローカルフードで、そこにはストーリーがあります。

一つひとつの食材が持つ美味しさ、生命力溢れる味わいを大切にし、丁寧に調理することで、「自然の料理」は生まれていきます。

 

リコッタ&ジャムで、最高のモーニングを

―シンプルでピュアなアプローチ、素敵ですね。何か、家庭でもできる手軽な楽しみ方やコツなどはありますか。

そうですね。リコッタで言えば、やはりマーマレードやジャムを合わせて朝食に!というのが、定番ではありますが、本当におすすめです。

日本のジャムやマーマレードもたくさんの種類がありますし、ローカルなリコッタを楽しむにはぴったり。さらに、お好みのパンをそこに添えれば、最高の朝が迎えられると思います。

 

奇をてらわず、一つひとつのシンプルな手仕事を大切に

―フレッシュなリコッタを使った料理を、何かご紹介いただけますか。

やさしい味わいの素材に、しっかりした風味を調理でプラスしてバランスをとっていくと美味しい料理ができます。

先ほどおすすめした「リコッタ+ジャム」の組み合わせも考え方としては同じですし、先日まで店でお出ししていた「フレッシュリコッタのラヴィオリ、バジルと新ニンニク」というメニューも、シンプルなリコッタやパスタ生地に、風味のしっかりしたニンニクとバジルペーストなどを合わせるという組み合わせ。基本は同じです。

今回は、段々と夏の陽気になってきましたので、爽やかな「フレッシュリコッタとトマトのサラダ」をご紹介したいと思います。

まずは“やさしい要素”への調味。リコッタを皿に盛り、軽く塩胡椒。塩はリコッタのやさしい味わいに合わせて、小笠原・父島のマイルドで細かなテクスチャーの塩を使います。

そこに合わせる“しっかり要素”は、トマトをメインとしたもの。小さなサイズのトマトを半分に切り、皮を削いだキュウリも食べやすい大きさにします。そこに鹿児島産の粗塩を振り、少し待つ。浸透圧の作用を利用して、野菜の“ジュース”を引き出したら、薄くスライスし千鳥酢(京都の米酢)で軽くマリネした玉ねぎ、フレッシュなオレガノとミントの千切りを合わせます。

皿の上にすべてをのせて、刻んだハーブを少し足し、オリーブオイルをかければ完成です。

難しいことは何もしていないけれど、素材それぞれが持つ美味しさがここにあります。「シンプル&ピュア」。まさにそういうサラダになっているかと思います。

 

ジェローム・ワーグさん

フランス・パリで生まれ、自然豊かなプロヴァンスで育つ。アリス・ウォータースが手がけ、オーガニックレストランの先駆けとなったカリフォルニア・バークレーの「Chez Panisse(シェ・パニース)」に勤務、後に総料理長を務める。日本には度々来日し、目黒で当時「BEARD」を営んでいた原川慎一郎氏をはじめとするさまざまなシェフとのコラボレーションも展開。 2016年より日本に移住し、原川氏とともにRichSoil & Co.を立ち上げ、2017年同店をオープン。

 

the Blind Donkey

東京都千代田区内神田3-17-4 1F
tel. 03-6876-6349
営業時間/17:00~23:30(bar 17:00~ / restaurant 18:30〜)
定休日/日曜・月曜
https://www.theblinddonkey.jp/ja/

text by 佐野嘉彦
photographs by 石原哲人

 

シリーズ《CHEF’S VOICE》
チーズを料理に生かす、プロフェッショナルたち。

https://cheese-media.net/?cat=32

 

ricotta
「出来たてリコッタ」はFRESH CHEESE Delivery(オンラインショップ)で
ほわほわ食感で、ほんのり甘い。
東京・渋谷で作られるフレッシュなリコッタは、料理にもデザートにも活用できて、低カロリー。オンラインショップでもお求めいただけます。
http://fcd.cheese-stand.com/

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