《ハイジの国のチーズたち》とろけたチーズをざーっと!「ラクレット」

ラクレット

暖炉の火にチーズをかざし、とろけたところをざーっとナイフで削り取って食べる、素朴なチーズ、ラクレット。

その名前は、“削り取る”を意味する“ラクレ(Racler)”から付けられました。文字通り、ラクレする豪快な食べ方、チーズのとろりとした様子は、食欲を存分に刺激してくれます。今回は、「ハイジの物語」でもおなじみ、ここ数年日本でも人気急上昇中のアルプスのチーズ、ラクレットについてご紹介します。

チーズファン必見!映画『ハイジ アルプスの物語』

 

ラクレットってどんなチーズ?

ラクレットチーズの生まれ故郷は、スイス南部のヴァレー州。マッターホルンをはじめとしたアルプスの名峰を抱く地域です。そんな美しくも自然の厳しい山岳地帯では、昔から保存性が高い中~大型の牛乳製ハードタイプやセミハードタイプのチーズが作られ、人々の命を繋いできました。

そして、ラクレットもそんなチーズのひとつ。重さ5㎏前後、セミハードタイプの円盤形チーズは、現地の家庭での保存に程良いサイズ。むっちりとやや水分を含む生地は加熱によって溶けやすく、ラクレしたり料理に使ったりするにはぴったりなのです。

ラクレットの様に炙って削る食べ方は、16世紀にはこの地方ですでに一般的でした。寒い冬の夜、暖炉の火で温まりながらあつあつのチーズを頬張るのは、当時から幸せな時間だったに違いありません。

なお、ラクレットと言うのはチーズ名であり、料理名でもあるので、ラクレット以外のチーズ、例えばブルー・ド・ジェックスやモルビエなどでラクレットをすることもできます。

ラクレットに使われるさまざまなチーズ

ズラリと並んだラクレット用のチーズ。ラクレットチーズ以外にも、モルビエやブルー・ド・ジェックス、羊乳製や山羊乳製のものも。
ラクレットオーブン

フランスのチーズ生産者のお宅でいただいたラクレット。シンプルで演出効果もあるラクレットは、おもてなしやパーティーにもぴったり。

ラクレット

フランスで毎年開催される農業祭にて。全部で100台はあろうかというラクレットオーブンがずらりと並ぶ。その姿は圧巻!

 

ラクレットの美味しい食べ方

ラクレットは、直径約30㎝もあるチーズを半分にカットし、その切り口を暖炉や焚火の炎にかざして溶けたところをナイフで削り、茹でたじゃがいもにかけていただくのがもともとの食べ方。

でも、アルプスから遠く離れた日本はもちろん、現代のヨーロッパでもなかなかそんなことはできないので、ラクレットオーブンやラクレットグリルを使うのが現実的。

お店でよく使われているのがラクレットオーブンで、これは、1/2サイズや1/4サイズのチーズの切り口を熱源に近づけて溶かすスタイル。ラクレ(削り取る)することができるので、より豪快で場が盛り上がります。

ラクレット

ラクレットグリル。こうやってチーズの切り口を熱して溶かして…

ラクレット

野菜や料理にざーっと削りかけます。

ラクレット

 

そして、一般家庭で便利なのが小型のラクレットグリル。これは、スライスしたラクレットを小さなフライパンに入れ、熱で溶かすスタイル。ぐつぐつとラクレットが溶けたところをじゃがいもなどの野菜にとろりとかけていただきます。

家庭用ラクレットグリル

ざーっと削り取る“ラクレ”はできませんが、溶けたチーズのなんとも言えない美味しそうな様子に歓声があがります。

ラクレットオーブンもグリルも無い場合は、テフロンのフライパンにチーズの切り口を当てて溶かしたり、スライスしたラクレットを入れて溶かすと良いでしょう。ちゃんと美味しいラクレットを楽しめますよ。ただし美味しすぎるので、食べ過ぎ注意です!

なお、ラクレット定番の付け合わせはピクルス。それも、コルニッションと呼ばれている小さくて甘味の無いタイプがおすすめです。

寒さが厳しく暖かい部屋が恋しくなる… そんな季節には、ラクレットチーズとじゃがいも、ピクルス、ワインを買い込んで、ラクレットディナーをぜひお試しください。

 

ラクレット(Raclette)のきほん

フランスや日本でもさまざまなラクレットチーズが作られていますが、ここでは原産地名称保護認定されている伝統的なスイスの「ラクレット・デュ・ヴァレー」の情報をご紹介します。

  • タイプ:セミハードタイプ
  • 原産地:スイス、ヴァレー州 
  • 原料:牛乳(無殺菌乳)
  • 熟成期間:最低3か月
  • 形状・重さ:直径29~32cm、高さ6~7cmの円盤形。重さ4.6~5.4kg

 

※撮影協力:スブリデオ・レストラーレ

yuki ogasawara
小笠原由貴(おがさわら ゆき)
恵比寿でパンと料理の教室「la nature(ラ・ナチュール)」を主宰。チーズのある食卓の幸福感、チーズの美味しさ、バリエーション、唯一無二のチーズが生まれる面白さに惹かれ、教室でも折に触れてその魅力を紹介している。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定ワインエキスパート、シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ。
http://ameblo.jp/naturefoodstyle/

 

《CHEESE Media 連載》ハイジの国のチーズたち

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映画『ハイジ アルプスの物語』

#01 とろけたチーズをざーっと!「ラクレット」の美味しいストーリー

#02 雄大なアルプスで育まれる「グリュイエール」の物語

#03 トムとジェリーもスイス好き?穴あきチーズ「エメンターラー」

#04 花びらのようなチーズが、修道士の頭から!?「テット・ド・モワン」

#05 かつお節のように削る「スブリンツ」は硬さも味もトップクラス

#06 ハイジゆかりの地で作られる、希少な「ベルナー・ホーベルケーゼ」

 

 

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東京・渋谷で作られる新鮮でフレッシュなチーズをお届けいたします。
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