看板もなく、一枚の扉を開くと広がるモノトーンの空間。12席のコの字型のテーブルの向こうには、ステージのようなオープンキッチン、さらにDJブースの一角まで。
「劇場型って言われることが多いんですが、僕らが目指しているのは“脱劇場型”なんです」。ここで繰り広げられるフレッシュチーズを使った料理とは?個性と魅力あふれる「81(エイティーワン)」のオーナーシェフ、永島健志さんにインタビューさせていただきました。(取材:2017年3月)
目指しているのは、食の“インスタレーションアート”
―どんなことを大切にしてこの店を展開されているのでしょうか。
僕らが目指しているのは、ゲストの皆さんが五感を使って食を楽しんでもらえるような空間と時間を提供すること、いわば食の“インスタレーションアート”です。
一方的に「見て、食べてもらう」のではなく、この場に来るゲストに何かドキドキしてもらうスイッチを押すようなことを、料理はもちろん、至るところに込めるよう心がけています。
店名の「81」は日本の国際電話番号。海外からのゲストも多いので、国産の食材にも、味はもちろんですが、ワクワクするようなストーリーがあるものをと考えています。
チーズはとても身近で、欠かせない食材
―チーズにまつわる特別な思い出やエピソードはありますか。
うま味をぐっと引き上げてくれるペコリーノやパルミジャーノ・レッジャーノ・・・ローマで修行していたこともあり、チーズはとても身近で、欠かせない食材です。
「81」のスペシャリテに「カルボナーラの再構築」という料理があります。鳥の巣に見立てたカダイフ※に、白トリュフオイルを注入した半熟卵。卵を崩すと、下に忍ばせたペコリーノやパンチェッタも混ざり合って、カルボナーラのように変化。これもチーズがなければ成立しない料理の一つで、とても大切な一品です。
※カダイフ:小麦粉で出来た細麺状の生地で、デザートや、魚や肉を包んで調理する料理でよく使用される。
―なぜCHEESE STANDのチーズを使ってくださっているのですか。
モッツァレラやリコッタは、フレッシュさが大事。もちろん、根本的に美味しくなければダメですが。毎日手づくりで、しかも近くの工房で丁寧につくられるフレッシュチーズは、値段以上の価値があるものだと思います。
東京都内の牧場で搾られた新鮮な牛乳が、渋谷の工房でチーズになる。そして、そのチーズを使って僕が料理を作る。ゲストにとってもそれは魅力的なストーリーですし、その価値を感じて、喜んでいただけます。
春を感じさせる言葉がコンセプト。
―チーズを使った料理をご紹介ください。
今回は、春のコースのメインで「東京ブッラータ」を使っています。
「花信風」「草若葉」といった春を感じさせる言葉がコンセプト。若草が萌える牧場やそこに吹く風といったイメージです。黒毛和牛のマルシンという部位の塊り肉を低温調理したうえで串打ちし、表面を炭火で焼きつけています。
繊細でクリーミーなブッラータとの対比から、少しワイルドに、BBQのような香ばしさをまとわせ、そこに、わさび菜などの若い葉野菜とエディブルフラワーを添えて。春の訪れを祝うような幸せな気持ちや風景を感じてもらえればと思います。
永島 健志さん
「81(エイティーワン)」のオーナーシェフ。「リストランテ・サバティーニ青山」などを経て、渡伊。ローマを中心に1年修行した後、一度帰国するも、さらにスペイン「エル・ブジ」で経験を積む。2012年、東京・要町で「81」をオープン。2015年8月に現在の西麻布に移転し、その世界観を常に発展させている。
81(エイティーワン)
東京都港区西麻布4-21-2 コートヤードHIROO
tel.050-5594-1458(完全予約制)
営業時間/①18:00〜、②21:00〜
定休日/日祝
text by 佐野嘉彦
photographs by 石原哲人
シリーズ《CHEF’S VOICE》
チーズを料理に生かす、プロフェッショナルたち。
- 「東京ブッラータ」はFRESH CHEESE Delivery(オンラインショップ)で
- クリームがとろ〜り、新鮮で濃厚。
- 東京・渋谷で作られるブッラータは、生クリームが入ったリッチで繊細なフレッシュチーズ。オンラインショップでもお求めいただけます。
http://fcd.cheese-stand.com/