
新宿の喧騒をすり抜け、キンプトン新宿東京の階段を上がると、そこにはニューヨークのマンハッタンを彷彿とさせる開放的な空間が広がっている。
「ディストリクト ブラッスリー・バー・ラウンジ」
モダンアートが飾られたこの場所で、日々、驚きに満ちた一皿を送り出しているのがヘッドシェフの穂積氏です。
シェフのキャリアは、横浜の老舗ホテルでの10年から始まりました。フランス料理の基礎を叩き込み、大規模な宴会やウェディングで、ありとあらゆるリクエストに応えてきたと話す穂積シェフ。
「当時は和・洋・中、何でもやりましたね」と笑う穂積シェフ。
その、いわば「食の総合格闘技」のような経験が、その揺るぎない技術が、今のシェフの自由な発想を支える確かな土台となっています。

「何でもあり」という、ニューヨークの洗練
ここキンプトン新宿東京のコンセプトは「グリル&シーフード」。
ですがその奥底にはニューヨークらしい「人種のるつぼ」のような多様性が流れています。
「ニューヨーク料理って、ホットドッグやピザだけじゃないんです。多様な人種が集まり、それぞれの文化が混ざり合って新しいものが生まれる。その『何でもあり』な面白さを、僕たちの料理でも表現したいと思っています」
その言葉通り、シェフの作る料理にはフレンチの技法をベースにしながらも、意表を突く「和のエッセンス」が潜んでいました。その代表格が、オープン当初から使い続けている「東京ブッラータ」を使った一皿でした。

シェフの活気を間近に感じる、スタイリッシュなメインエリア
テラス席などはペットと一緒にゆったりと寛げる。新宿の空の下、開放感あふれるリゾートのようなひととき。

東京でしか作れない、究極のフレッシュさを求めて
前任のシェフから引き継いだ人気メニューだったと穂積シェフは語ります。
変更する食材も多くあったがブッラータは本当に気に入っているからと継続することに決まった。
「単なる〝人気メニュー〟としてではなく、この場所(東京)で提供する意味を深く噛み締めています。
場所柄、海外からのお客様も多いのですが、そこで『これは東京で作られたチーズです』と説明すると、すごく興味を持っていただけるんです。地元の食材を、その土地で食べる。それは、何よりの贅沢ですから」
メニューでは、この真っ白なブッラータを丸ごと一個、贅沢に提供する。時には醤油麹を使ったドレッシングを合わせ、時にはイチゴやマンゴーといった季節のフルーツを添える。
「チーズってお酒のアテには最高ですが、食事として出すなら、特にブッラータは何かと組み合わせることでより味が引き立つ。フルーツの甘みが加わると、チーズのミルク感がより鮮明になるんです」
ーシンプルだからこそ、計算し尽くされた調和
そんな穂積シェフが、提供するのは「東京ブッラータ・フルーツトマト」

一見すると王道の組み合わせだが、その一皿には、フレンチのバックボーンを持つ彼ならではの繊細な設計図が隠されていました。
「使用しているのは、糖度の高いオスミックトマト。そこに醤油麹のドレッシングを合わせるのですが、醤油麹のコクにレモンジュースでキレのある酸味を足しています。仕上げには、トマトの風味をより凝縮させるために、自家製の乾燥ドライトマトを散らして。バジルやオリーブオイル、ブラックペッパーというシンプルな調味ですが、食材それぞれの役割を明確にしています」
皿の上に置かれた真っ白なブッラータにナイフを入れると、中からとろりと溢れ出す生クリーム。そこに、醤油麹の旨みとトマトの凝縮感が絡み合う。それは、慣れ親しんだイタリアンのカプレーゼとは一線を画す、ここでしか出会えない「東京のブラッスリー料理」です。

土砂降りのなか、自転車で運んだ「信頼」
シェフと『CHEESE STAND』の絆を語る上で欠かせない、忘れられないエピソードがある。それは、ある日の営業中のこと。ブッラータの在庫がどうしても足りなくなってしまったことがあったそう。
「どうしても今日、お客様にこのブッラータを出したかった。だから自分で電話して、富ヶ谷の店舗まで自転車で取りに行ったんです。そうしたら、帰りにひどい土砂降りにあってしまって(笑)。びしょ濡れになりながら、必死でチーズを抱えて走りました。色んな意味で、忘れられない思い出です」
そこまでしてでも、彼は「このチーズ」でなければならない理由がありました。代わりのきかない、確かなクオリティへの信頼。その熱意は、一皿の料理を通じてお客様へと真っ直ぐに伝わっています。

変わらない情熱と、新しい可能性
インタビューの最後、最近注目している食材について尋ねると、「逆におすすめはありますか?」と穂積シェフ。
リコッタやセミハードチーズなど熟成チーズも美味しいとお伝えすると
「ぜひ試してみたいですね」と目を輝かせます。
10年の基礎の上に、ニューヨークの自由な発想を重ね、東京の鮮度を添える。
穂積シェフが描くキャンバスは、これからも新しい食材と出会うたびに、さらに鮮やかに塗り替えられていくに違いありません。

穂積 悠帆(Hozumi Yuho)シェフ
1989年7月生まれ 東京都出身。
横浜グランドインターコンチネンタルホテルでキャリアをスタート。
約10年間宴会部門でに携わり、フランス料理の技術、大規模なイベント運営、ケータリング、ウェディングを学ぶ。
その後、プルマン東京田町に移り、朝食ビュッフェからアラカルト、コースメニューまで、幅広い料理を手がける。
キンプトン新宿東京の開業時より、ジュニアスーシェフとしてチームに加わり、現在は、ディストリクト ブラッスリー・バー・ラウンジのヘッドシェフとして、日本の食文化とアメリカの食文化を融合させた、革新的なメニュー作りに情熱を注いでいる。
キンプトン 新宿東京
東京都新宿区西新宿3丁目4−7
TEL:03-6258-1111
営業時間:6:30-23:00
定休日:なし
https://www.kimptonshinjuku.com/jp/











