北参道の閑静な住宅街にあるマンションの地下にひっそりとお店を構えるレストラン「SINCERE(シンシア)」。キッチンと客席が一体となる店内は、友人宅に招かれたような温もりある空間とシェフたちの遊び心溢れる料理がゲストを迎えます。
2016年のオープン当初からパティシエを務める大山恵介さんを訪ねました。
コース全体のバランスに寄り添う
―シンシアでは、どのようなメニューを提供していますか。
私はパティシエなので、コースの最後にお出しするデザートメニューを担当しています。シンシアのコースは、とにかく量が多いので、デザートが出るころには、皆さんお腹いっぱいになっています。そんな中でも美味しかったと思ってもらえるように、甘みを抑えつつ、酸味や苦味を程よく加えながら、出来るだけ軽めなお皿になるように心がけています。
固定概念を覆す、イノベイティブな発想
―コースを締めくくる最後のお皿。お客様のお腹の具合も考えながら作るデザートは、パティシエとして重要な役目ですね。メニューに対するこだわりを教えてください。
固定概念にとらわれず、これまで誰も考えたことのないような組み合わせでゲストを驚かせたいと思っています。それから、日本でお店を構えるフレンチレストランとして、和の食材を積極的に取り入れたり、日本の繊細さとの融合を意識しながらメニューを考えています。
―それぞれのメニューはどのような発想で生み出されるのでしょうか。
私の場合、ほとんどのメニューは頭の中で完成していて、実際に手を動かすのは、最後の微調整ぐらいなんです。時間のある限りいろいろなお店をまわって頭の中の引き出しにしまってしておくと、ある時いろいろな情報が組み合わさって、パッとイメージが降りてくるタイミングがあって。
実はそこまで深く考えていないんです(笑)。あんまり考えすぎると楽しくなくなってしまうし。料理は楽しいのが一番だと思っています。
素材の美味しさに魅了されて
―CHEESE STANDのチーズを使ってくださっている理由を教えてください。
フランスで働いていた時の同僚、原 太一さんがシェフを務めるお店「Bistro Rojiura(ビストロロジウラ)」で提供されているフレンチトーストにCHEESE STANDのストラッチャテッラがのっていて。それが出会いのきっかけでした。
その後すぐにCHEESE STANDのお店まで行ってチーズを食べてみたんですが、どれも美味しくて。イタリアのチーズはどこも使っているし面白くないなと思っていたタイミングでもあったので、早速メニューに取り入れてみました。
―改めて今回ストラッチャテッラをお試しいただきましたが、お味いかがでしたか?
美味しかったです。ちょうど今それをどう使っていこうか悩んでいたところなんです。フランスに「リオレ」というお米を使ったデザートがあるのですが、それに近いものが頭に浮かんではいるのですが、まだ形になっていなくて。
季節の食材を合わせて
―チーズを使ったメニューについて教えてください。
CHEESE STANDのチーズは、これまでもクリスマスメニューやおせちなどに使ってきましたが、今日は新作として日向夏を使ったジェラートをご用意しました。
メレンゲと日向夏を合わせた土台に、リコッタチーズをミキサーにかけて滑らかなピューレ状にしたクリームをのせ、その上に日向夏のジェラートと大葉で香り付けした日向夏のアイスをトッピングしました。
このお店は常にメニューが変わっていくので、タイミングが来た時に、ゲストにも味わっていただきたいと思います。
―チーズは普段から召し上がりますか。
シェーブルチーズに蜂蜜をたっぷりかけてサラダに乗せて食べるのが好きで、家でもよく食べています。昔働いていたフランスのお店で、よくまかないに出てきたんです。チーズをトーストにのせてオーブンで焼き、とろとろに溶けた状態のままサラダの上に乗せて、蜂蜜とビネガーで食べるのが定番で。日本はコストが高いので、まかないでシェーブルチーズを食べるなんで贅沢すぎてなかなかできないですけどね。
―家でも料理をされるんですね。
料理はとにかく好きなので、休みの日はだいたい作っています。今はパティシエですが、フレンチもイタリアンも一通り学んできたので、家ではいろんなものを作ります。4歳になる子どももいるので、ケーキやクッキーを粉まみれになりながら一緒に作るのが楽しくて。子供相手についついプロ意識が入ってしまうこともありますが(笑)。
大山恵介さん
1986年12月生まれ。高校卒業後、日本菓子専門学校にて和洋菓子を専攻。京橋「イデミスギノ」のほか、都内のレストランで経験を積んだ後、渡仏し、フランス各地のレストランでデザートと料理を学ぶ。帰国後、銀座「アルジェントASO」、新橋「レストランラフィネス」、武蔵小杉「パティスト」などの有名レストランでシェフやパティシエを務め、千駄ヶ谷「シンシア」のオープニングとともにシェフパティシエに就任。
SINCERE
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-13 原宿東急アパートメントB1
TEL:03-6804-2006
営業時間:18:00~21:00(L.O.)
定休日:日曜日、第1第3第5月曜日
https://www.facebook.com/fr.sincere
photo by 石原哲人
シリーズ《CHEF’S VOICE》
チーズを料理に生かす、プロフェッショナルたち。
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