ニューヨークで探究「ナチュラル・フレーバー」って何だろう?

mofad flavor

ナチュラル、自然派、無添加……体に良さそうなイメージがあるけれど、厳密なことはよくわからない。そう思ったことはありませんか?商品の種類によっても定義が異なるので、人工的なものとの明確な境界線を引くことが難しいのも確かです。

ものづくりは、伝統と革新、素材と技術のなかで発展していくもの。チーズづくりに使われる酵素や添加物にも人工的なものがあるけれど、それがすべて体に悪影響を及ぼすわけではありません。

アメリカは人工的なものを次々と開発して大量生産を行っているイメージが強い国かもしれませんが、一方、ナチュラルやオーガニックといった言葉も氾濫しています。

そんななか、風味付けの香料・フレーバーを題材にしたある企画展が、ブルックリンのウィリアムズバーグにある“食の博物館”、MOFADで行われました。

 

MOFADとは?

mofad

MOFADの正式名称は「The Museum of Food and Drink」。つまり“食”をテーマにした博物館です。でも、“博物館”と聞いて一般的にイメージするものとは大分違います。いわば「体感型の企画展が行われるギャラリースペース」といった感じでしょうか。

「食は文化。生きていく上で、誰もが関わるテーマです。ブルックリンはもちろん、世界各地から賛同してくれる人が集まってきていて、ゆくゆくは常設展示やカフェ、ワークショップスペースなども兼ね備えた“食のグローバルセンター”へと、大きく進化していく構想を持っています。」とMOFADのスタッフは語ります。

mofad

 

フレーバーは脳で判断されている

2016年6月、MOFADで行われていたのは「FLAVOR: MAKING IT AND FAKING IT(フレーバー:試行錯誤のなかから生まれるもの)」なる企画展。

香料や調味料の歴史や構造をパネルで学ぶだけでなく、実際に匂いを嗅いだり、舌で味わったりする仕掛けが用意され、「ナチュラルってなんだろう?」ということを自分なりに考えてみようという企画です。

mofad making it

入口からはこう見えるタイトルも…

mofad faking it

mofad faking it

反対からはこのように。
タイトルの「MAKING IT(作り出す) AND FAKING IT(騙す、偽る)」がデザインで表現されています。

mofad video

初めのレクチャービデオでは、味の認識は、舌だけではなく、目で見た印象(視覚)や匂い(嗅覚)などを総合して脳内で判断しているということを、分かりやすく伝えています。

 

「レクチャービデオで学んだことは、果たして本当なのか?」

それを体感できる実験コーナーがすぐ横に。使われていたのは、チェリー、バナナ、レモン、ココナッツ、チョコレート……といった味も色も多彩なジェリービーンズ。

mofad jerry beans testing corner

1粒ずつ、目をつぶって食べたり、鼻をつまんで食べたり、また、何粒かを同時に食べたり……。MOFADのスタッフのナビゲートのもと、味の認識というものは総合的に脳で判断した結果であるということが楽しく学べるようになっていました。

 

チーズの香りって?

mofad flavor aroma machine

会場で一番大きな仕掛けが作られていたのが、におい(香り)にテーマを絞った実験コーナー。様々な香料がこの実験装置の下に仕込まれています。

mofad flavor aroma machine

フレーバーのなかに“チーズのにおい”を発見。

mofad flavor aroma machine

構成されている要素は「butyric acid(酪酸)」と「diacetyl(ジアセチル)」と示されています。スナック菓子などのチーズフレーバーに使われる二大要素とのこと。

mofad flavor aroma machine

butyric acid(酪酸)とdiacetyl(ジアセチル)のボタンを同時に押すと、その2つの香料の部分が光ります(構成要素が2つとも光っている「チーズ」は写真の左上)。ちなみに、ジアセチルは、ポップコーンとパンケーキ、ローストアーモンドの要素としても光っています。

mofad flavor aroma machine

装置にあるダクトのような管からは、ボタンを押したその香りが放出されるので、鼻を近づけて実際に嗅ぐことができます。「チーズ」は、まさに“チーズ味のスナック菓子”のにおいがしました。

 

自然と人工の間(はざま)で

香料や調味料が開発されてきた歴史として、バニリン(バニラの香りのもと)を例にとり、詳しく紹介。

mofad board vanilla
mofad flavor board

バニラの樹から抽出し、どのようにエッセンスが作られるか。また、エッセンスのブレンドも担う、香りのプロフェッショナルの仕事についても、多くの写真パネルとともに紹介されていました。

mofad citral

レモンに代表される柑橘系の香りのもと“シトラル”を題材に、自然なものと人工的なもののボーダーラインを考察するコーナーも。

果物からそのまま抽出したものは、もちろんナチュラルフレーバーと言えますが、レモングラスや他の植物から抽出したエッセンスをブレンドしたものはどうでしょう?

自然界の原料だけであれば、それはナチュラルなものといってもいい?
テレピン油から抽出したシトラルは人工的なものに入る?
でも、松脂などの天然素材のみが原料のテレピン油だったら?……

展示としては、答えを明示するのではなく、それぞれの参加者に考えさせる趣向です。

mofad share your thoughts

 

最後は「Share Your Thoughts(あなたの考えを共有してください)」というコーナーで締めくくられます。

すべてのコーナーを体験したうえで、「自然と人工の境界線はどこにおくか」「作られた香料の利点は何だと思うか」「香料が添加された食品をどう考えるか」「自分の好みのフレーバー」などについてその人なりに考え、この企画展の感想とともにボードにコメントを貼っていきます。お決まりの答えを用意するのではなく、こうしたワークショップ形式で締めくくるのは、アメリカ的なスタイルといえるかもしれません。

他にも、普段自分が食べたり飲んだりしているものを振り返り、人工的な香料や調味料がどれだけ使われているかを考えるコーナー(それがイコール悪いという短絡的なことではなく)もあり、五感と脳を使いながら、身近な題材で「食」について学ぶことができました。

「FLAVOR: MAKING IT AND FAKING IT」は、2016年9月10日をもって終了となりましたが、こうした手法は他の企画展でも展開されるとのこと。

Food is culture.(食は文化)
ブルックリンを訪れた際には、このMOFADにも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

 

MOFAD
http://www.mofad.org/

62 Bayard Street, Brooklyn, NY 11222
営業時間 水〜木: 12-17 | 金: 12-20 | 土・日:12-18
Tel: 718.387.2845

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5回にわたって「チーズ」をキーワードにニューヨークを巡ってきましたが、いかがでしたでしょうか。

体験型の旅行や、テーマを持って海外を訪ね歩く人も増えてきました。「チーズが好き」という方は、ぜひその土地のチーズについてアンテナを張って、歩いてみてください。新たな発見が、次への扉を開いてくれると信じています。

 

text and photographs by 佐野嘉彦(CHEESE Media 編集長)

 

ニューヨーク・チーズ紀行(全5話)

vol.01「ニューヨークのおすすめチーズショップ6選」

vol.02「ニューヨークでは定番に!フレッシュチーズの前菜4選」

vol.03 「朝食からおつまみまで!ブルックリンでチーズを堪能」

vol.04 「世界最優秀ソムリエに聞く!ワインとチーズ料理のペアリング」

vol.05 「ニューヨークで探究「ナチュラル・フレーバー」って何だろう?」

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