グルメ、アート、エンターテインメント、ファッション……多種多様な民族や文化が共存し、エネルギーに満ちあふれているニューヨークは、海外の旅行先としても常に人気の街です。
そんなニューヨークにおける食を「チーズ」という視点から見ると、そこにはまだ知られていない美味しくて楽しいモノやコトがたくさんあります。
そこで、チーズとニューヨークをこよなく愛するCHEESE Media編集長の佐野が、5回にわたってみなさんをナビゲート。
第1回は、世界各地から輸入された伝統的なチーズから、自国で独自にアレンジして生まれた農家製のチーズまで、バラエティ豊かなチーズと出合える6つのチーズショップを巡ります。
① Bedford Cheese Shop(ウィリアムズバーグ)
まずは食の流行発信地、ブルックリンから始めましょう。
このBedford Cheese Shopのあるウィリアムズバーグは、1990年代以降、マンハッタンから多くの若いアーティストや職人たちが移り住み、食においてもドレンドを生み出す中心地として人気となったエリアです。
そんなウィリアムズバーグの目抜き通りであるBedford Avenueにこの店が誕生したのは、2003年。チーズはもちろんですが、ハムやソーセージなどの肉加工品やパスタ、調味料、チョコレートなど、ローカルなものを中心とした様々なセレクト食材が揃う店です。
(※2016年8月、Bedford Cheese Shopは、同じ通りですが近隣に移転。写真はすべて移転前の2016年6月の取材時に撮影されたものです)
店内に並ぶチーズはおよそ130種。季節によりそのラインナップは変わりますが、フランス、イタリア、スペイン、イギリスといったヨーロッパ各地のチーズも揃い、アメリカ各地の工房が手がけたアルチザンチーズ(職人が作るチーズ)も豊富です。
せっかく訪れるなら、比較的来客の少ない平日の午前中か15〜18時がおすすめ。土日ならオープンと同時に。
チーズ専門店はどこも基本的にはすべて試食可能ですが、空いている時間なら丁寧に説明してくれるので、自分の予算と好みに合うチーズをゆっくりと探すことができます。
これは、Jasper Hill Farm(アメリカ・ヴァーモント州)の「Bayley Hazen Blue」というブルーチーズ。エアシャーという乳牛の無殺菌乳が原料で、青カビの風味は穏やか。ナッツのような香ばしい風味があるので、樽の香りの効いた赤ワインはもちろん、色も味も濃いタイプのビールとの相性も抜群で、編集長イチオシのローカルチーズです。
支店がマンハッタンのユニオンスクエア近くにあり、そこでは「モッツァレラづくりの体験」などのワークショップや「ウイスキーとチーズのペアリング」などのセミナーも行われています。
マンハッタン観光のみという方は、ぜひこちらにどうぞ。
Bedford Cheese Shop
http://bedfordcheeseshop.com/
・Brooklyn
229 Bedford Avenue, Brooklyn, NY 11211(新住所)
営業時間 月〜金: 9-21 | 土: 8-21 | 日 8-20
Tel: 718.599.7588
・Manhattan
67 Irving Place, New York, NY 10003
営業時間 月〜土: 8-21 | 日 8-20
Tel: 718.599.7588
② BKLYN Larder(ブロスペクトハイツ)
もう一軒、ブルックリン内にあるショップをご紹介しましょう。
週末にファーマーズマーケットや様々なフェスティバルも行われる大きな公園、プロスペクトパークの北から、街並みの美しいパークスロープにかけてのエリアには、オーガニックな食材にこだわる人が多く住んでいます。
そんな街の大通りに面しているのが「ブルックリンの食料庫」という名のこの店。
軽食が楽しめるイートインスペースもあり、各国の高品質な食材が集う「食のブティック」といった感じの店ですが、特にチーズのラインナップに力を入れています。
チーズは国内外のものが常に50〜60種。どのスタッフもチーズに詳しいので、カウンター越しに好みや予算を伝えると、ぴったりなものを選んでくれます。もちろん試食もOK。
お土産に買うなら、この「Lille(Coulommiers)」がおすすめ。
フランスの伝統的な白カビチーズ「クロミエ」をオマージュしているそうですが、形は樽栓型で、味わいはとてもクリーミーでマイルド。Vermont Farmstead Cheese Companyという工房で作られています。味はもちろん、このパッケージが最高に魅力的!ソフトなチーズでもこのケースなら型崩れの心配なく、持ち運びできます。
BKLYN Larder
http://www.bklynlarder.com/228 Flatbush Avenue, Brooklyn, NY
営業時間 月〜金: 8-21 | 土: 8-20 | 日 9-19
Tel: 718.783.1250
③ Saxelby Cheesemongers(ロウアーマンハッタン)
それでは、ブルックリンを離れて、マンハッタンに移動しましょう。
3軒目は、ニューヨーク市の再開発プロジェクトで生まれたEssex Marketという屋内型マーケット施設内にある、わずか3.4坪の小さなチーズショップです。
ここは、アメリカの国産ナチュラルチーズの専門店。この後にご紹介するニューヨーク最大手のチーズショップ「Murray’s」で経験を積んだ後、ニューヨーク近郊のチーズ工房やフランスの熟成士のもとで学んだアン・サクセルビーさんが2006年に独立開業した店です。
写真はスタッフのアイリーンさん。
「夏は季節柄、フレッシュタイプのチーズが多めになったりするけれど、トレンドは追わずに30種ほどのベストなチーズを揃えるようにしているのよ。」
アイリーンさんのおすすめチーズは「Oma」。
von Trapp Farmstead cheesesというヴァーモント州の農場兼工房で作られ、先ほどご紹介したブルーチーズのJasper Hill Farmで熟成された、いわば“コラボレーションチーズ”です。ウォッシュタイプにしては香りも穏やかで味わいもマイルドなので、ウォッシュチーズ初心者にぴったりのチーズかもしれません。
こちらは、Saxelby Cheesemongersとのコラボレーションイベントが行われた「61 LOCAL」。このレストランはブルックリンにあり、ニューヨーク・ローカルの生産者と消費者をつなぐイベントが頻繁に行われています。
今ではEssex Marketのショップとは別に倉庫も借り、こうしたローカルな食材にこだわった飲食店とのコラボレーションイベントも盛んなSaxelby Cheesemongers。オーナーのアンさんは、こうした“課外活動”でも大忙し。アメリカの農家製チーズの“今”を知るなら、欠かせない店と言えるでしょう。
Saxelby Cheesemongers
https://store.saxelbycheese.com/
Essex Market 120 Essex St, New York, NY 10002
営業時間 火〜土: 10-19 | 日 10-18
④ Murray’s(グリニッジビレッジ/ミッドタウン)
ツアー客の観光バスも止まるほどの有名店。それが、グリニッジビレッジにあるこのMurray’s本店です。
創業は1940年。150種以上の世界各国のチーズが揃い、オリジナルパッケージのチーズやチーズ関連のグッズも豊富。セミナーやワークショップの開催も盛んで、小売はもちろん、マンハッタンの多くのレストランにも卸している最大手のチーズショップです。
この店でご紹介したいのは、店舗オリジナル熟成による「Project X」。
フェンネルの花粉をまぶし、リースリングという品種のブドウで作られたワインで拭って手入れをしながら自然な外皮を作り、熟成させたハードタイプのチーズで、無殺菌の牛乳製。熟成によるうま味はありますが、個性的な風味はあまりないので、チーズ初心者の方でも楽しめます。
支店が、グランドセントラル駅構内のショッピングセンターにあるので、ミッドタウン近辺で買い物を済ませたいときにはとても便利。但し、駅の通勤客や忙しい人向けの店ということもあり、チーズの試食(事前予約をしない場合)は、15〜19時の限定対応とのことなのでご注意を。
Murray’s
http://www.murrayscheese.com/
・Greenwich Village
254 Bleecker St. (between 6th & 7th Ave.)
New York, NY 10014
営業時間 月〜土: 8-21 | 日 9-20
Tel: 212.243.3289・Grand Central Market
43rd St. & Lexington (at CENTER OF MARKET)
New York, NY 10017
営業時間 月〜金: 7-21 | 土: 10-19 | 日 11-18
Tel: 212. 922.1540
⑤ Lucy’s Whey(チェルシー/アッパーイーストサイド)
ニューヨーク土産としても人気の「ファットウィッチベーカリー」や「エイミーズブレッド」、「ジャックトーレス・チョコレート」などの店があり、観光スポットとしてもすっかり有名になったチェルシーマーケット内にあるチーズショップです。
とても小さなショップですが、取り揃えているチーズは130種ほどもあるのだそう。ローカルチーズを中心にしながら、輸入チーズも取り扱っています。
お土産でも喜ばれるニューヨークのローカルチーズの定番が、ここにもありましたのでご紹介します。現地ではとても有名な「Kunik」という白カビタイプのチーズ。使われているミルクは、山羊乳とジャージー牛乳のミックスで、生クリームも添加して作られているため、味わいは濃厚でクリーミー。ニューヨーク州内のNettle Meadow Farmというところで作られています。
アッパーイーストサイド(セントラルパークの東側)には、レストラン併設のショップもありますので、ぜひそちらもどうぞ。
Lucy’s Whey
http://www.lucyswhey.com/
・Chelsea
425 W. 15th St.
New York, NY 10011
営業時間 月〜土: 10-20 | 日 10-19
Tel: 212.463.9500・Upper East Side
1417 Lexington Ave.
New York, NY 10128
営業時間 月〜土: 10-20 | 日 10-19(夏期は日曜休)
Tel: 212. 289.8900
⑥ EATALY(フラットアイアン)
日本でもご存じの方が多い、イタリアの食の百貨店、いや“ワンダーランド”とも言うべきEATALYのチーズ売場も、注目したいスポットです。
イタリアからの直輸入チーズやアメリカ国内のローカルチーズはもちろん、本当に世界各国のチーズが取り揃えられ、まるで“チーズのオリンピック”を見ているかのよう。その数は150種を超えるとか。ハムやサラミ、パンにワインに、コーヒーに・・・とここにいるだけで、一日過ごせてしまいそうな大きな店です。
さらに、モッツァレラの製造実演コーナーまであり、毎日、大小様々なサイズのモッツァレラチーズが作られています。
実演は毎朝9時の開店時間にスタート。カードに湯を注ぎ、お餅のように練り上げて、丸いモッツァレラを成型していく行程を目の前で見ることができ、作りたてを買うこともできます。
「その日の在庫状況によって、13時や16時からも作るし、時々ブッラータも作るんだよ。」と、モッツァレラ職人のアレックスさんが教えてくれました。
2016年8月11日には、ワールドトレードセンター・Tower4内に支店がオープンしたようですので、お近くに行かれる方は、そちらも一度チェックしてみてください。
EATALY
https://www.eataly.com/us_en/stores/new-york/
200 Fifth Avenue, New York, NY 10010
営業時間 毎日 9-23
Tel: 212.229.2560
各国のバラエティに富んだチーズが一堂に会しているのが当たり前というのは大都市に限られ、世界でも実はそう多くありません。世界の食文化がひしめき合い、「人種のサラダボウル」とも呼ばれる、アメリカ・ニューヨークはその最たる街と言えるかもしれません。
チーズはその土地ならではの個性を持った面白いものがありますので、今回、チーズについては、ローカルなものをご紹介しました。
ニューヨークを旅する際には、チーズショップ巡りもぜひ。新しい味や体験が待っているかもしれません。
text and photographs by 佐野嘉彦
ニューヨーク・チーズ紀行(全5話)
vol.02「ニューヨークでは定番に!フレッシュチーズの前菜4選」
vol.03 「朝食からおつまみまで!ブルックリンでチーズを堪能」