その土地の自然や食材を見つめ、その素晴らしさを料理に生かす。世界の料理界でもそんなニューノルディック(新・北欧スタイル)は注目の的。
東京とパリで培ったフレンチの技術を礎に、本場デンマークでそのナチュラルな価値観や芸術性を体感。そして、日本の食材とともに独自の世界を展開し、ミシュランガイド東京2017、2018と2年連続で一つ星に輝いた「Sublime(スブリム)」シェフ、加藤順一さんにインタビューさせていただきました。(取材:2017年3月 ※2017年8月、店舗は麻布十番に移転)
デンマークでクリエイティブな刺激
―チーズにまつわる特別な思い出やエピソードはありますか
デンマークではクリームチーズをはじめ、世界的な市場を相手にした大量のチーズが生産されていますが、それとは別軸で、レストランでは“Homemade Fresh Cheese”として、料理人自らがヨーグルトや笊(ざる)豆腐くらいの食感のフレッシュチーズをつくり、よく料理に活用しているのを見ました。
また、クリームチーズくらいの固さの山羊乳チーズで、表面を焼き付けてさらにスモークしたものなんかも。クリエイティブな刺激を私もたくさん受けました。
―CHEESE STANDのことはどのようにお知りになったのですか。
デンマークにいた頃に、Facebookを通じて知りました。「東京でチーズをつくっている人がいるんだ。しかも同年代の人か、面白いな」と。先ほどお話ししたように、自分も手づくりのフレッシュなチーズを活かした料理や食文化に刺激を受けていたこともあって、「日本に戻ったらぜひ藤川さんに会おう!」と思って、Facebook経由でコンタクトをとったのが始まりでした。
カチョカヴァッロが、北欧料理らしい一品に。
―チーズを使った料理をご紹介ください。
今回は「カチョカヴァッロ」を使って特別メニューを作ってみました。スライスしたカチョカヴァッロはバーナーで炙って、香ばしさと溶けて伸びる食感を引き出します。
合わせたのは、塩でマリネした生ホタテ、茹でた紀州うすい豆、アップルビネガーで漬けた新玉ねぎのピクルス、豆苗。黒いものは、炭を練り込んだパンのチュイルです。
そこに、生クリームなどの乳成分とディルのオイルでつくった、色鮮やかなソースを。すべて乳化させずにわざと分離させたソースは、それぞれの個性が共存。北欧料理らしいもののひとつだと思います。
コクがあってミルク感があるリコッタは使いやすい。
―家庭でもできるチーズ料理、またはチーズの使い方のコツなどを教えてください。
今回はカチョカヴァッロを使ってみましたが、「出来たてリコッタ」が個人的に好きでよく買います。
たとえば、軽く茹でたケール、ザクロ、リコッタをはちみつマスタードのドレッシングと和えて・・・朝食にぴったりですよね。
コクがあってミルク感があるリコッタに、北欧料理のポイントでもある酸味と、甘いニュアンスを足して。そんなイメージで、旬の野菜や食材をプラスして楽しむといいと思います。
加藤 順一さん
1982年生まれ。「タテル・ヨシノ芝パークホテル」「オテル・ド・ヨシノ」で経験を積んだ後、2009年パリの名店「アストランス」へ。2012年にデンマーク・コペンハーゲンへ渡り、「レストラン・エーオーシー」「ホテル・ダングルテール内 マーシャル」にてニューノルディック料理を体得。2015年「Sublime(東京・新橋 ※2017年8月に麻布十番に移転)」の料理長に就任。オーナーソムリエの山田栄一氏とのタッグのもと、2017年、ミシュラン一つ星を獲得。
Sublime(スブリム)
東京都港区東麻布3-3-9 アネックス麻布十番1F
tel.03-5570-9888
営業時間/12:00〜(L.O. 13:00) 18:00〜(L.O. 20:00 ※日曜 L.O 19:30)
定休日/月曜
https://www.sublime.tokyo/※取材は旧店舗(東京・新橋)にて実施。画像は当時の店舗で撮影したものとなります。
text by 佐野嘉彦
photographs by 石原哲人
シリーズ《CHEF’S VOICE》
チーズを料理に生かす、プロフェッショナルたち。
- FRESH CHEESE Delivery(オンラインショップ)
- モチモチ、びよーん!ミルクの甘みと旨みが凝縮したチーズ、カチョカヴァッロ。
- 東京・渋谷で作られるカチョカヴァッロをお届けいたします。
http://fcd.cheese-stand.com/