見た目はまるでおぼろ豆腐。そして真っ白で柔らかなリコッタ。スプーンですくって口に入れると、ミルクの甘味がふんわりと広がる優しい味のフレッシュチーズです。
イタリアを旅行すると、ホテルの朝食ビュッフェで必ずと言って良いほど出てくるので、見覚えのある方もいるかもしれませんね。最近では、国産物を日本のスーパーでも見かけるようになりました。
リコッタの主な産地は、モッツァレラの生産が盛んな南イタリア。というのも、モッツァレラを作った後のホエー(乳清)で作られる事が多いから。そして、“ri(再び)・cotta(煮る)”という名前は、チーズ作りの副産物、ホエーを再利用、再加熱して作るその製法から呼ばれるようになりました。
では実際に、チーズ工房でのリコッタ作りの様子をご紹介しましょう。
リコッタの製法
1. ホエーに少量のミルクやクリームを加えて、ゆっくりと加熱します。絶えず混ぜながら、温度を確認しながら、ゆっくりゆっくり…
2. ある温度になったら、前日のホエーを加えます。すると、もろもろとした塊がどんどん沸き上がってきます。
3. 湧き上がってきた塊をすくい取り、籠に入れて水を切ったら出来上がり。ふわふわと籠に入った様子は、おぼろ豆腐そのもの。ミルク製のおぼろ豆腐と言っても良いかもしれません。ほわほわと湯気を上げる様子は、見るからに美味しそうです。
リコッタの美味しい食べ方
甘い系でも塩味系でも、どちらにでも使えるのがリコッタの素晴らしいところ。イタリアで一般的なのは、シンプルに塩・胡椒・オリーブオイルをかけたり、サラダにのせたり、ラビオリ等パスタの詰め物にしたり。また、シチリア島のカッサータやカンノーロ、ナポリのスフォリアテッレ等の郷土菓子には欠かせません。日本では、某パンケーキ店をきっかけとしたブームのお陰か、パンケーキに混ぜ込むのも随分とポピュラーになりました。
そして、私のおすすめのシンプルな食べ方をご紹介しましょう。
まずはレンジで人肌程度にほんのり温めてそのままひと口。リコッタの優しい甘みとミルクの風味を楽しみます。次ははちみつをたらりと垂らしてまたひと口。リコッタのミルク感とはちみつの甘さが混ざり合い、まるでデザートの様です。さらにそこにイチヂクや桃、ブドウやチェリーなど、旬の果物を添えるのも美味です。
なお、日本で見かけるリコッタはほぼ100%牛乳製ですが、イタリアでは水牛乳製モッツァレラを作った後のホエーで作られることも多いので、牛乳製はもちろん、水牛乳製もあります。また、ナポレオンの出身地として知られるコルシカ島(現在はフランス領)では、羊乳製リコッタの“ブロッチュ”が有名で、ナポレオンの母親が愛したことでも知られています。
ところで余談ですが、このリコッタ、厳密に言うと日本では「チーズ」ではなく「乳等を主原料とする食品」に分類されています。なぜなら、主原料が乳ではなく、乳清だから。このことはイタリアやフランスなどのヨーロッパでも長く議論されてきましたが、今のところヨーロッパでは「チーズ」として認定されて落ち着いています。
高タンパク低脂肪なリコッタは、ダイエット中の方にもそうでない方にも体に優しいチーズ。様々なお料理やお菓子にも使えるし、クセが無く、ミルク感豊かな味は日本人の舌にも馴染みやすいものです。今後さらに一般的になっていくのでは、と私が期待しているチーズのひとつです。
リコッタのきほん
・タイプ: フレッシュタイプ
・原産地: カンパーニャ州を主とした南イタリア一帯
・原料: 牛・水牛・羊の乳清、生乳、クリーム
・形状・大きさ・重さ: もろもろとした粒感のあるペースト状なので、一般的なものに決まりはないが、水切りした時の籠の跡が付いている事が多い。
- 小笠原由貴(おがさわら ゆき)
- 恵比寿でパンと料理の教室「la nature(ラ・ナチュール)」を主宰。チーズのある食卓の幸福感、チーズの美味しさ、バリエーション、唯一無二のチーズが生まれる面白さに惹かれ、教室でも折に触れてその魅力を紹介している。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定ワインエキスパート、シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ。
http://ameblo.jp/naturefoodstyle/
リコッタを美味しく楽しもう!
- 「出来たてリコッタ」を美味しく楽しむセットがオンラインショップに登場!
- ふわふわのリコッタパンケーキが簡単に作れるレシピ付きの「パンケーキMIX&リコッタ」や「出来たてリコッタ」のためにブレンドされたグラノーラとのセットが、FRESH CHEESE Delivery(オンラインショップ)でお求めいただけます。
- ご家庭で、ミルク感あふれるリコッタを楽しんでみませんか?
http://fcd.cheese-stand.com/