見た目は、パルミジャーノ・レッジャーノにそっくり。
今回ご紹介する「グラナ・パダーノ」は、古い伝統を持つ、イタリア産 超硬質大型チーズで、現地イタリアでは、パルミジャーノ・レッジャーノの生産量よりも多く(D.O.P.と呼ばれるイタリアの原産地名称保護制度で認定されているチーズの中で、最大の生産量を誇ります)、イタリアではごくごく日常的に親しまれている、とても美味しいチーズです。
と言っても、パルミジャーノ・レッジャーノの存在感に押されてか、日本での知名度は今ひとつ。名前を聞いたことのある方のほうが少ないかもしれません。
今回は、そんなちょっと劣勢な「グラナ・パダーノ」に光を当ててみたいと思います。
グラナ・パダーノってどんなチーズ?
グラナ・パダーノが作られているのは、ブーツ形をしたイタリア半島の付け根部分を流れるポー川が造り出した、広大なパダーナ平原、そして、その北部の山岳地帯までを含む広大な地域です。
11世紀頃から、この一帯では大型の超硬質チーズが作られていましたが、それらはいずれもモロモロとした粒状の組織を持つため、“粒状のもの”を意味する“Grana(グラナ)”という総称で呼ばれていました。その中のひとつが、パルミジャーノ・レッジャーノであり、グラナ・パダーノです。そのほかにもロディジャーノなどがあり、それぞれ生産地や製法等が少しずつ違ったりしますが、お互いが兄弟とも言えるチーズです。
パルミジャーノ・レッジャーノと違う三大ポイント
- 生産地域がより広い
- 1日2回製造できる(パルミジャーノは1日1回)
- 熟成期間が短い
そして見分ける場合に目印となるのが、表皮の刻印です。グラナ・パダーノには、そのロゴが記されています。
グラナ・パダーノのロゴマークは、こんなダイヤ型をしています。
表皮をみると、ロゴマークの刻印が連なっています。
表皮が付いていない場合は、中の組織のアミノ酸の結晶の大きさでもある程度分かります。
熟成の長いパルミジャーノ・レッジャーノは、結晶の白い斑点の直径が5mm近くあることも多いのですが、グラナ・パダーノの場合は、針の先ほどの小さなものであることが多いです。ただ、これは絶対ではないので参考まで。
熟成が進んだパルミジャーノ・レッジャーノの多くは、大きな結晶が生成されていきます。
味わいの特徴は?
グラナ・パダーノの味は、見た目通りパルミジャーノ・レッジャーノと似ているのですが、よりしっとりとしていて口どけ良く、ミルクの風味が豊かで優しいので、そのまま食べるには、私はこちらの方が好きなくらいです。
使い方は、おろしてパスタやリゾット、グラタンに、ピーラーで薄く削ってカルパッチョやサラダに、またフリッターの衣に混ぜたり、スライスしてドライフルーツやナッツと共に…と、パルミジャーノ・レッジャーノと全く同様です。塊を砕いてそのままいただくのも格別です。
ちなみに、“ミートソース”の名で親しまれているボロネーゼ(Bolognese)も、鮮やかなサフランの黄色が美しいリゾット・ミラネーゼ(Risotto Milanese)も、グラナ・パダーノを使うのが本来の伝統的なレシピ。
ボロネーゼは、エミリア・ロマーニャ州 ボローニャの郷土料理で、リゾット・ミラネーゼはロンバルディア州 ミラノの郷土料理ですが、いずれの場所も、このグラナ・パダーノの原産地です。
“ミートソース”の名で親しまれている「ボロネーゼ」に、グラナ・パダーノは欠かせません!
色鮮やかな「リゾット・ミラネーゼ」。食欲をそそります。
“キッチンの夫”と呼ばれるチーズ
「パルミジャーノ・レッジャーノ」は主にリストランテで使われることが多い、レストランのチーズですが、対して「グラーナ・パダーノ」は“キッチンのハズバンド(夫)”とも呼ばれ、家庭の食卓で日常的に親しまれている、家庭のチーズとも言えます。
それにこのグラナ・パダーノ、実はパルミジャーノ・レッジャーノよりもお値段ぐっとお手頃。普段使いにおすすめです。
最近はスーパーでもたまに見かけるようになりましたので、冷蔵庫に塊で常備して、お料理やおつまみにと、日常の食卓でたっぷりと使っていただきたいチーズです。
グラナ・パダーノ(Grana Padano)のきほん
- タイプ:ハードタイプ
- 主な産地:パダーナ平原を中心とした、イタリア北部一帯
- 原料:牛乳(部分脱脂の無殺菌乳)
- 熟成期間:最低9か月間
- 形状・重さ:直径35~45㎝、厚さ18~25㎝、重さ24~40㎏
- 旬:通年
- 小笠原由貴(おがさわら ゆき)
- 恵比寿でパンと料理の教室「la nature(ラ・ナチュール)」を主宰。チーズのある食卓の幸福感、チーズの美味しさ、バリエーション、唯一無二のチーズが生まれる面白さに惹かれ、教室でも折に触れてその魅力を紹介している。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定ワインエキスパート、シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ。
http://ameblo.jp/naturefoodstyle/