「どのチーズがいちばん好き?」と聞かれると、私は迷わず“コンテ!”と答えます。そのくらい、いつ食べてもしみじみと美味しく、何度食べても期待を裏切らないチーズが、このコンテ。冷蔵庫に常備しているほど大好きな、フランス産、牛乳製の大型ハードタイプチーズです。
コンテってどんなチーズ?
コンテが生まれたのは、フランス東部、スイスとの国境地帯であるフランシュ・コンテ地方のジュラ山脈一帯です。標高200~1500mのこの地方は、雄大な自然がとても美しいところですが、冬の寒さが厳しく、その厳しい冬を乗り切るために保存性の高い大型ハードタイプチーズが作られるようになりました。
1個の重さが40㎏前後もあるコンテを作るには、450L以上もの牛乳が必要。1件の酪農家ではまかないきれないため、この地方では昔から、複数の酪農家が「フリュイティエール」と呼ばれるチーズ工房に乳を集めてチーズを作り、「アフィヌール」と呼ばれる熟成士によって熟成させるという、協力し合うシステムが生まれました。そしてそれは、現在でも続いています。
コンテの魅力は、なんと言ってもテロワール(その土地ならではの気候風土)が反映された美味しさ。
製法や産地、牛の食べるもの等は厳密に規定されており、牛の種類はモンベリアード種とフレンチ・シメンタール種のみ。その牛たちは、夏は山の放牧地で自然に育つ草花を、冬はその干し草を食べてミルクを出すので、土地の特性や植物相が乳へ、そしてチーズへと移り、その土地ならではのコンテの味となっていきます。
ところで、コンテをいくつか見ているとその色の違いに気付くことがあります。「熟成期間が違うからなのかな」と思いがちですが、実は、色の違いは主に作られた季節によるもの。
夏作りのコンテ(写真右)は、牛たちが青草を食べてミルクを出すため、草のカロテンがチーズへと移って黄色がかった色になります。それに対して冬作りのコンテは、牛たちが干し草を食べているので乳中のカロテンが少なく、チーズも白っぽい色となります。どちらが良いというものではありませんが、夏作りのコンテはテロワールが反映された複雑な味になることが多く、冬作りのコンテは、よりナッツの様な風味が深く、こっくりと仕上がることが多いようです。
夏と冬、自分好みのコンテを見つけてみるのも楽しいかもしれません。
なお、品質管理が徹底されているコンテは、出荷前に必ずひとつひとつ品質のチェックが行われます。採点により、20点満点中12点以上のものにはコンテとして茶色のラベルが貼られます。さらに14点以上のものには緑色のラベルが貼られます。そして残念ながら12点未満となったチーズはコンテの名を名乗れず、プロセスチーズの原料となってしまいます。
ちなみに、フランスAOCチーズの中でコンテの生産量はダントツの1位!
フランスで最も広く親しまれているチーズです。
コンテの美味しい食べ方
コンテは、老若男女、誰にでも食べやすいチーズ。だから、カットしてそのまま気軽におやつにつまんだり、ワインのお供にしたり、また、パンに挟んでサンドイッチにしてもとても美味。ドライフルーツやナッツ等と一緒にいただくのもおすすめです。
また、朝食、昼食、おやつ、夕食、食後と時間やシチュエーションも選ばないので、本当に万能。 また、若くしなやかなコンテは熱で溶けやすいので、グラタン、キッシュ、クロックムッシュ、チーズフォンデュ…と料理に使っても美味しく仕上がります。
サラダにトッピングする時はカットして散らすのも良いのですが、ピーラーやスライサーでひらひらと薄く削ってのせてると、口どけ良く、香りが華やかに広がってより美味しくいただけます。
そしてワインを合わせるなら、やっぱり同郷ジュラのワインを。 熟成の長いコンテにはヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)が理想的ですが、若いコンテならアルボワなど、サヴァニャン種を使ったワインも間違いのないペアリングです。ただ、ジュラのワインはちょっと入手しづらいので、他の白ワインやシャンパーニュなどのスパークリングワインと合わせても楽しめます。
人が集まる時はもちろん、日常の食卓でも、チーズ選びに迷ったら、まずはコンテがおすすめです。
コンテ(Comté)のきほん
- タイプ:ハードタイプ(加熱圧搾タイプ)
- 原産地:フランス、フランシュ・コンテ地方
- 原料:牛乳の部分脱脂したもの(無殺菌乳)
- 熟成期間:最低120日間
- 形状・重さ:直径55~75㎝、高さ8~13㎝の円盤形。重さ32~45㎏
- 小笠原由貴(おがさわら ゆき)
- 恵比寿でパンと料理の教室「la nature(ラ・ナチュール)」を主宰。チーズのある食卓の幸福感、チーズの美味しさ、バリエーション、唯一無二のチーズが生まれる面白さに惹かれ、教室でも折に触れてその魅力を紹介している。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定ワインエキスパート、シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ。
http://ameblo.jp/naturefoodstyle/