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私たちの日常に溶け込む、チーズとコーヒー。どちらも好きという方でも、この2つを一緒に召し上がったことのある方はそう多くはないのでしょうか。
チーズのさまざまな魅力は、このCHEESE Mediaでも紹介していますが、コーヒーもここ数年、“シングルオリジン”や“サードウェーブ”といった言葉とともに、よりバリエーション豊かな広がりをみせています。
「チーズやコーヒーをより身近なものに感じ、もっと美味しく楽しんでほしい。」
そんな想いから行われたあるワークショップで、意外な「チーズとコーヒーの美味しいペアリング」が紹介されました。そこで今回は、CHEESE Media学生インターンの北原が、その模様をみなさまにお届けします。
3種のチーズ&コーヒー。そこに意外な「ちょい足し」も。
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ワインと同じように、コーヒーも香りや味わいがさまざま。特に浅煎りのコーヒーは香りの特徴が感じ取りやすいとのことで、3種のタイプの異なるチーズと相性が良いコーヒーが登場します。
ポイントは、単に「合う」ということではなく、「高め合って美味しくなる」ということ。さらに、それぞれの組み合わせによる美味しさを引き立ててくれる「ちょい足し」。その技アリなコツにも注目です。
1. ウォッシュチーズとグアテマラ産のコーヒー
チーズの表皮を塩水や酒で拭いながら熟成させる、ウォッシュタイプのチーズが、トップバッター。
これは「ピエ・ダングロワ(Pie d’Angloys)」というもので、チーズの品揃えが良い店ではよく見かけるチーズです。乳脂肪分が60%以上のダブルクリーム(生クリームを添加してつくられる)のチーズなので、ウォッシュタイプ特有の個性的な香りはさほどでもなく、まろやかでクリーミーな味わいが特徴です。
このチーズに合わたいコーヒーは、ほのかな香ばしさとともに、さわやかな柑橘系の酸味があるタイプ。
ワークショップで提供されたコーヒーは、グアテマラの「ラ・フォリエ(La Folie)」という農園のシングルオリジンコーヒー。カシューナッツのような風味と、冷めてくると徐々に現れる酸味やオレンジのような果実味が特徴です。
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コーヒーを口に含みながらチーズと共に味わってみると、あらびっくり。なめらかなコクのあるチーズがコーヒーの酸味で爽やかに。コーヒーにクリームを入れて飲む感覚ととてもよく似ています。
そしてこの組み合わせに加えるちょい足し食材は「シナモン」。3つを組み合わせると、ウォッシュチーズの塩味が緩和されて、3つがそれぞれを引き立てバランスがとれたものになります。
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ところで、なぜシナモンがこの組み合わせに合うのでしょうか。
ウォッシュチーズは、フランスのブルゴーニュやアルザスなどの冷涼な気候の土地で造られるものが多いのですが、こうした地方の料理には、クリスマスに食べられるお菓子パンデピスなどのように、スパイスやハーブなどを使うものが多いのだそう。
なかでもシナモンパウダーは手に入りやすいですし、「ピエ・ダングロワ」でなくても、クリーミーなチーズなら相性が良いとのこと。ほんのり甘く感じる、スイーツのようなペアリング。3時のおやつ、コーヒータイムにぴったりです。
2.カマンベールチーズとエチオピア産のコーヒー
2つ目に紹介するのは、白カビタイプのカマンベールチーズのペアリング。カマンベールは、みなさんも馴染みがあるチーズのひとつではないでしょうか。
元々はフランスのノルマンディー地方でつくられるチーズで、無殺菌乳でつくられる本家本元の「カマンベール・ド・ノルマンディー」ではなく、今回はコーヒーに合わせやすいよう、よりマイルドな味わいを求めて、殺菌乳製のカマンベールが使われました。
おすすめのコーヒーは、軽やかで紅茶のようにさっぱりとした印象のコーヒー。
ワークショップでは、コーヒー発祥の地でもあるエチオピアのアラカ(Alaka)のコーヒーが登場。エチオピアにあるアビシニア高原の原種「アビシニア種」という豆で、プラムや青りんごのような香りがあるコーヒーです。
この組み合わせ。味わってみると、コーヒーが持つ香りやほのかな苦みがチーズのコクとよく合います。
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ここで登場、ちょい足し食材。今回は「りんごジャム」です。
ワークショップで使用されたのは、信州野沢温泉にある「ハウスサンアントン」自家製の「シナノスイートのりんごジャム」。りんごの名産地、長野の品種別でつくられる無添加ジャムは、甘すぎず、まさにりんごそのものを食べているようなフレッシュな味わいです。
この3つが合わさると、これまた不思議。コーヒーの持つ爽やかな酸味とりんごの甘味が、カマンベールチーズと相まってまとまりを生みます。
チーズとコーヒーとりんごジャムのペアリング。
意外な組み合わせだなと思われる方もいるかもしれませんが、カマンベールの故郷であるノルマンディー地方は、りんごや洋梨の生産地として有名です。りんごとカマンベールは、現地でも定番の組み合わせ。そこに、爽やかな香りを持つエチオピア産のコーヒーを合わせると味わいにさらに深みが出るのです。
白カビタイプのチーズは、表皮の白カビ部分を食べる分量によっても、味や風味の感じ方が変わるのも特徴のひとつ。日本製のマイルドなカマンベールでもぜひ試してみたい、そんなペアリングです。
3.ブルーチーズとブラジル産のコーヒー
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最後にご紹介するのは、青カビタイプのチーズ。
なかには「ブルーチーズはちょっと苦手…」という方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のチーズは、風味がマイルドでナッツのような香りが特徴の「フルム・ダンベール(Fourme d’Ambert)」。日本人が感じやすいうま味がやコクがしっかりあって、食べやすいブルーチーズです。
おすすめのコーヒーも、チーズと同様にナッツのような風味があって、コク豊かなタイプ。
この日は、ブラジルのセラ・ネグラ(Serra Negra)のコーヒーがベストマッチということで用意されました。ローストの香ばしさが、まるで“きな粉”を彷彿とさせます。
この組み合わせに何をちょい足しするのかというと、何と「メープルシロップ」です。
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「クワトロ・フォルマッジオ」などのチーズたっぷりのピッツァに、はちみつをかけて食べたことがある方も多いと思いますが、今回は定番のはちみつではなく、ダークタイプという、色も風味も濃いメープルシロップと合わせていただきました。
黒蜜のような風味を持つこのメープルシロップ。コーヒーの「きな粉」の風味や、チーズのナッツのような香ばしさが融合すると、なんだか黒蜜ときな粉を使った和菓子のよう!ブルーチーズの塩気もあって、甘じょっぱい味がたまりません。
このペアリングは、まさにマリアージュ。みなさん、きっと驚くはずです。
魅惑のペアリング。ヨーロッパ産チーズとコーヒー。
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このレポートのもととなったワークショップは、CNIEL(フランス全国酪農経済センター)とEU(ヨーロッパ連合)の共同主催によるプレス向けワークショップ「魅惑のペアリング。ヨーロッパ産チーズとコーヒー」というもの。
Japan Cheese Award運営委員なども務めるCHEESE Mediaの佐野編集長(写真右)と、新宿「4/4 SEASONS COFFEE」の齋藤淳さん(写真左)とのコラボレーションで行われました。
最新の食情報を動画報道する「Food Voice」より当日の模様
ご紹介したチーズやコーヒー、副食材の組み合わせは、一番相性が良いのではないかと思われるものを、佐野編集長が、バリスタの齋藤さんとともに産地や銘柄などをさまざま考え、実際にいくつも実験し、見出したものです。
でも、単体の食材としては、どれも比較的手軽に入手し、試して頂けるものばかり。コーヒーは浅煎りのもので、似たような香りがあれば楽しめるそうです。
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チーズやコーヒーがお好きな方はもちろん、アルコールが苦手な方、チーズやコーヒーにちょっと苦手意識のある方にも試してほしい、意外な2つの組み合わせ。実は知らなかっただけで、この出合いはあなたが知らなかった新たな世界への扉を開く第一歩になるかもしれません。
ぜひご家庭でも試していただいて、みなさんなりの新たなマリアージュや驚きを発見してみてください。
information sources from Cniel(フランス全国酪農経済センター)/EU(ヨーロッパ連合)
北原たまき(きたはら たまき)
CHEESE Media 学生インターン。約1年スイスに留学した際に、生活の中でチーズの美味しさや魅力に目覚める。日々食いしん坊街道まっしぐら。
- 「出来たてモッツァレラ」はFRESH CHEESE Delivery(オンラインショップ)で
- 真っ白でぷるん、つるん。
- 東京・渋谷で作られるフレッシュなモッツァレラはミルク感もあって、料理にも最適。オンラインショップでもお求めいただけます。
http://fcd.cheese-stand.com/