那須から全国へ発信!ナチュラルチーズと山羊肉の世界へ《今牧場チーズ工房 後編》

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真っ白できめの細かい、しっとりとした山羊のチーズ、食べたことありますか?

——「今牧場チーズ工房」には高橋雄幸さんが作る「茶臼岳」という台形の山羊チーズがあります。

オレンジ色のちょっと独特な香りのウオッシュチーズ、食べたことありますか?

——「今牧場チーズ工房」には高橋ゆかりさんが作る「りんどう」という大きな四角いウォッシュチーズがあります。

そして。

草のような香りもある、かわいい子山羊さんのお肉、食べたことありますか?

 

酪農の現場で生まれるものは、ミルク。そして、肉という命

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かわいい小さな山羊を食べるなんて残酷、と思った方もいるかもしれません。でも、私たちの食卓に馴染みのある牛肉のことを考えてみてください。

肉牛として肥育された牛以外にも、酪農の世界で生まれた雄牛は食肉として世に出て、私たちの血肉となります。子どもを産まなくなったお母さん牛も、国産牛として市場に出荷されます。

今牧場で生まれる雄の山羊たちも同じ。

以前は沖縄の市場に出していたという子山羊たちですが、数年前から全国のレストランや那須の仲間たちからの要望もあり、高橋さんは山羊肉の販売を始めました。

自らの子山羊肉を食べるイベントも企画し、積極的に出向いて、その美味しさや尊さを伝えています。

評判は上々で「臭みもなく上品で、肉質も柔らか」とお客様もシェフたちも大喜びだと伺いました。雄幸さんのお気に入りは柔らかい子山羊のカツレツだそう。

どうですか。食べてみたくなりませんか?

 

那須の自然を表した唯一無二のチーズたち

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まずは、冒頭に登場した「茶臼岳」。外見は木炭粉をまぶしたちょっと灰色、中は真っ白な山羊のチーズで、雄幸さんの代表作でもあります。丁寧に反転させながら熟成していくと、味がのって、甘みと旨みと柔らかな酸味のある、上品な味わいになっていきます。

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「山羊乳は臭い」と思っている方にこそ召し上がっていただきたい、この茶臼岳。今年、ピーク時には1日に山羊乳量が100㎏を超え、チーズを置く棚が足りなくなるほど作ったそうですが、すべてお嫁入り先が決まっているという人気ぶりです。

もう一つ、「朝日岳」というフレッシュチーズも山羊乳製。

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作りたてが美味しいチーズで、そのままジャムやはちみつをかけたり、サラダにちらしてトッピングに・・・と楽しみ方もたくさん。さっぱりとした美味しい山羊のミルクの味がストレートに味わえます。山羊乳は泌乳シーズンがあり、チーズ作りも期間限定です。

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一方、ゆかりさんの作る牛乳製チーズも、それぞれユニーク。

納豆菌のお友達、リネンス菌の作用によって鮮やかなオレンジ色に仕上がっている「りんどう」は、ウォッシュタイプのチーズ。

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「ウォッシュ」というのは洗うという意味ですが、塩水で丁寧に拭うように、一つ一つのりんどうを磨いていきます。ミルクと塩がこなれていくと食べごろ。ふわっと独特の香りが鼻に抜けていきます。日本酒との相性抜群のチーズです。

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まさに牛乳豆腐と呼べる、出来たてのチーズ、「ゆきやなぎ」(塩入り、塩なしの2種あり)は、ふるふるの食感。お醤油とおかか、ねぎたっぷりかけてというのもオツですね。

さらに、セミハードタイプの「みのり」は焼いて食べると皮まで香ばしく、「りんどう」よりちょっと小さめの丸いウォッシュ「しののめ」は、もちっと柔らかめ。後味に香りが残る、印象深いチーズたちばかりです。

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みのり

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しののめ

 

「熱意は磁石」を地でいく

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松下幸之助の著書の中にあった、ある言葉に感銘を受けて、思い出しては行動に移そう!ともかく動いて行こう!そうすればきっと何かが起こる!と信じている雄幸さん。

それは、「熱意は磁石」という言葉。

チーズ作りと並行して、那須ナチュラルチーズ研究会を立ち上げたり、日本チーズ生産者の会として農水省に働きかけに出向いたりと、ともかく動く、動く。

今牧場の他にも近隣にチーズ工房がいくつもある那須。

時に勉強会を開き、ミーティングをし、みんなでイベントをつくる。メンバーはチーズ生産者だけではなく、チーズを販売する人、応援する人、買う人、飲食店のシェフやスタッフ、まさに茶臼岳の磁力に吸い寄せられるように雄幸さんの周囲には明るい人たちが集まり、チーズと那須を盛り上げていくんだ!というパワーが漲っています。

そして、日本全国にも那須チーズファンがどんどん増えています。

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週末、思い立ったらひょいっと那須高原へ出かけてみませんか。秋の空、深い緑が紅葉に変わる季節の那須もまた美しいですよ。

春に生まれた今牧場の子山羊も大きくなって、「んめぇ~~!!(おいでなす~!!)」とお出迎えしてくれることでしょう。

 

今牧場チーズ工房
〒325-0304
栃木県那須郡那須町大字高久甲5898
Tel 0287-74-2580
https://www.cheesekobo.com/

 

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大和田百合香(おおわだ ゆりか)
2001年より1年数か月にわたり、フランスやイタリアのチーズ産地を訪ね歩き、帰国後「BonBon! FROMAGE!」の名前でチーズを楽しむ会を主催。チーズ王国本店に勤務しつつ、ライフワークである国産ナチュラルチーズの工房を訪ねて北へ南へ。二人の男児育児にも奮闘中。東京農業大学栄養学科卒。CPA認定チーズプロフェッショナル、JSA認定ワインアドバイザー、フランスチーズ鑑評騎士の会シュヴァリエ。

 

牧場から始まるチーズの世界

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美味しい日本のチーズには、日本の酪農とともに生きる素敵なストーリーが。日本各地の牧場、そしてチーズ工房を訪ね、その魅力に迫る連載です。

https://cheese-media.net/?tag=farm

 

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