《ハイジの国のチーズたち》ハイジゆかりの地で作られる、希少な「ベルナー・ホーベルケーゼ」

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

ハイジの舞台となったスイスは、国土のほとんどが山地。九州と同じくらいの広さですが、その風土に根ざしたチーズの数は、なんと数百種類にものぼります。

チーズファン必見!映画『ハイジ アルプスの物語』

前回の「スブリンツ」に代表される、鉋(かんな)で削るチーズはスイスにいくつかありますが、このベルナー・ホーベルケーゼもそのひとつ。なんと言っても、チーズの名前自体が、Berner(=ベルンの)Hobel(=鉋の)käse(=チーズ)、つまりは“ベルンの鉋チーズ”なのです。

そして昔、アニメ『アルプスの少女ハイジ』のロケハンが行われた地が、このチーズのふるさと。今回はそんな「ベルナー・ホーベルケーゼ」をご紹介します。

 

ベルナー・ホーベルケーゼってどんなチーズ?

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© Switzerland Tourism/Max Schmid

このベルナー・ホーベルケーゼ、日本ではなかなかお目にかかれないとても希少なチーズ。

それもそのはず、“ベルナー・ホーベルケーゼ”を名乗るためには、まずはベルナー・アルプケーゼ(“ベルン州のアルプスの山々で作るチーズ”の意)というチーズを作り、その中でも特に品質の良いものだけをさらに熟成させて仕上げることが求められる、選ばれたチーズなのです。

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

そもそも、素となるベルナー・アルプケーゼ自体がまた希少。5月10日~10月10日のアルプスでの放牧期間にしか作ることが出来ず、しかも作っているのはどれも小規模な山のチーズ工房のみ。“山小屋”と言う言葉がしっくりくる建物です。そこで職人さんたちが昔ながらの方法で手作りしているので、どうしても大量には作れないのです。

 

ベルナー・ホーベルケーゼの故郷

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

ベルナー・アルプケーゼ、そして、ベルナー・ホーベルケーゼが作られているのは、スイスのベルン州南部を中心としたアルプスの山々。雪をかぶった美しい山脈の頂を見上げる、雄大な景色が広がる場所です。ハイジがひょっこり顔を出しそうですね。

アルプスの中心地として世界自然遺産に登録されているユングフラウ地方は、ベルン州の高地にあることからベルナー(ベルンの)オーバーラント(高地)地方とよばれているところ。

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

春から秋まで、そんな場所に牛たちは放牧され、自然に生えている高山植物やハーブを思い思いに食んでいます。

その牛たちが出すミルクは、その土地ならではの風味が反映された、ナチュラルで上質なもの。そのミルクが新鮮なうちに、近くの山小屋でのチーズ作りが行われます。

 

ベルナー・ホーベルケーゼは、どう作る?

ではここで、素となるチーズ、ベルナー・アルプケーゼの作り方をご紹介しましょう。

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

このチーズを作るのは、1日1回。

搾乳自体は朝・夕の2回行いますので、前日夕方のミルクは冷やして一晩静置します。すると、乳脂肪をたっぷり含んだクリームが浮き上がってきますので、それを取り除きます。(取り除いたクリームは、そのままクリームとして使ったり、バターに加工されたりします)

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© Switzerland Tourism/Christof Schuerpf

翌朝、搾乳したての新鮮なミルクと前日のミルクを銅鍋に集めて作られるのですが、その前日夕方のミルクも含め、“搾乳後18時間以内にチーズ作りを行わなければいけない”というのが決まり。美味しいチーズ作りに妥協は許されません。

ミルクに仔牛の胃袋から取ったレンネット(凝乳酵素)を加え、薪の炎で温めながら(加熱に使う熱源は薪の炎というのもルール!)、ワイヤーを張った道具なども使い、時間をかけて細かな固形分(カード)と水分(ホエー)に分けていきます。(アニメ『アルプスの少女ハイジ』でも、ハイジとおんじがチーズを作っているシーンがありました)

固形分は底に沈み、水分(ホエー)が上にたまるので、そのホエイを大まかにバケツなどですくい出します。

残った固形分を布で濾し取り、布ごと型に入れ、布をきれいに整えてからプレスして水分を切ります。

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© Switzerland Tourism/Christof Schuerpf

そして、型から出したチーズを丸1日塩水に浸けたら、熟成へ。熟成中は、週に1~2回程度、塩水をつけたブラシや布でチーズを磨いてひっくり返す作業を何度も繰り返します。磨く時に使うのは基本的には塩水ですが、塩水にワインや果汁、香辛料、ハーブ等を加えることも許されています。

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© Switzerland Tourism/Christof Schuerpf

最低でも2週間、製造した山小屋で熟成させ、6か月後に品質のチェックを行います。そして合格したものだけが“ベルナー・アルプケーゼ”と認められ、出荷されます。

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さらにこの時、“Surchoix(シュルショワー)”と呼ばれる最高品質のものを選び出し、製造した山小屋でさらに12か月熟成させたものだけが、「ベルナー・ホーベルケーゼ」と名乗ることを許されるのです。

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行程のほぼすべてが手作りで、自然で、数百年も変わっていない...まるでハイジの時代、いえ、それ以前にタイムスリップしたような感覚を覚える、そんなチーズが、ベルナー・アルプケーゼ、そしてベルナー・ホーベルケーゼなのです。

昔と違うのは出荷時の様子でしょうか。

昔はロバや牛に積んだり、時には人が背負子で背負って麓の町まで運んでいましたが、現在ではヘリコプターで一気に運ぶ様子も見られます。

 

ベルナー・ホーベルケーゼの美味しい食べ方

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

ベルナー・ホーベルケーゼはとても硬いので、ナイフでカットするのは至難の技。そして生まれたのが鉋(かんな)を使って薄く削って食べる方法です。前回ご紹介した「スブリンツ」と同じですね。

鉋で削るとクルクルと巻いた状態になるので、それをそのまま摘まむのが主な食べ方。鉋が無い場合は、野菜ピーラーで削ったり、ナイフで砕いたりしても。また、パンにのせたり、おろして料理に使っても良いでしょう。ちなみにスイスでは、薄く削ってくるくる巻きにした状態でパック詰めし、使いやすい状態で販売されてもいます。

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3AHobelkaese_8364.jpg

 

なお、ベルナー・ホーベルケーゼは、とても硬いことや鉋で削るところなど、スブリンツとよく似ていますが、ベルナー・アルプケーゼの方がより標高の高い所で作られていることと、塩味が優しいことが主な違いです。

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© Switzerland Tourism/Yuko Makino

 

日本ではなかなか入手できないベルナー・ホーベルケーゼ。

もし夏にスイスに行かれることがあれば、ぜひアルプスの山小屋を訪ね、作った人から買い、雄大な自然の中でピクニックしながらいただいてみましょう。

もう、想像しただけで最高!一生の宝物になる思い出ができそうです。

 

ベルナー・ホーベルケーゼBerner Hobelkäse)のきほん

  • タイプ:エクストラハードタイプ(加熱圧搾タイプ)
  • 原産地:スイス、ベルン州南部および隣接州の一部
  • 原料乳:牛乳(無殺菌乳)
  • 熟成期間:最低18か月間
  • 形状・重さ:直径28~48㎝、重さ5~16㎏の円盤形

 

協力:スイス政府観光局、Switzerland Cheese Marketing AG

yuki ogasawara
小笠原由貴(おがさわら ゆき)
恵比寿でパンと料理の教室「la nature(ラ・ナチュール)」を主宰。チーズのある食卓の幸福感、チーズの美味しさ、バリエーション、唯一無二のチーズが生まれる面白さに惹かれ、教室でも折に触れてその魅力を紹介している。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定ワインエキスパート、シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ。
http://ameblo.jp/naturefoodstyle/

 

《CHEESE Media 連載》ハイジの国のチーズたち

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【8/26〜上映】チーズファン必見!映画『ハイジ アルプスの物語』

#01 とろけたチーズをざーっと!「ラクレット」の美味しいストーリー

#02 雄大なアルプスで育まれる「グリュイエール」の物語

#03 トムとジェリーもスイス好き?穴あきチーズ「エメンターラー」

#04 花びらのようなチーズが、修道士の頭から!?「テット・ド・モワン」

#05 かつお節のように削る「スブリンツ」は硬さも味もトップクラス

#06 ハイジゆかりの地で作られる、希少な「ベルナー・ホーベルケーゼ」

 

 

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